バレイショの半数体に関する研究 : 第2報二基半数体における染色体対合

概要

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S. tuberosum の原型はなく,従てその起源を究明することはバレイショ育種の基礎問題として重要な課題とされている。それには先ず本種のゲノム構成を明らかにすることが必要である。従来この点についての見解は数多く出されているが,いずれも本来の四倍体のレベルにおける研究に基いているため,研究者によつてその見解に開きがあつた。半数体の研究は,かかる場合に重要な意義をもつている。著者は Deodara の半数体につき,異つた季節的条件のもとで染色体の対合行動と花粉稔性を調べ,これを本種に最も近縁な二倍種 S. stenotomum のそれらと比較して次の如き知見を得た。還元分裂中期における対合は,気温によつて著しく影響され、低温時では約66%の細胞に12_<II>が形成されるが,高温時では5%前後の細胞にそれがみられるにすぎない。他はいずれも前者で2〜4,後者で2〜14にわたる一価染色体を示す。しかも二価染色体の多くは対合が極めてゆるく,キアズマ頻度もかなり低い。更に若干の細胞には三価接合もみられる。花粉稔性は極度に低い。しかるに S. stenotomum はいずれの場合においても常に規則正しい対合を示し,花粉稔性も半数体に比べてはるかに高い。これらの事実は, S. tuberosum のもつ2組のゲノムが時に対合はなし得ても,その親和力は近緑性二倍種に比べるとかなり弱く,その間には染色体の交換も自由にはゆるされない程度の構造的差異が存在することを示唆する。従て本種を同質四倍体とする見解には同調しがたく,部分的異質四倍体とみるのがより妥当と考える。
日本育種学会の論文
1960-10-20

著者

松林元一
兵庫農科大学

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