イネ品種から選んだ高い雑種稔性を示す遺伝解析用交配組合せ
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概要
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イネ種子カルスの再分化能に関与するQTLの検出用集団の親品種を選ぶため,主としてインドアッサム地方に産する34品種を用い,日本型・インド型検定品種との交雑F_1に不稔が生じにくい品種をスクリーニングした。イネでは日本型とインド型との間で多数のマー力ーが得られるが,その組合せでしばしば生じるF_1不稔に着目した。すなわち,再分化能QTLの検出の際,効率的な形質評価のためには集団の大きさを限らざるを得ないため,F_1稔性の高い親品種を選ぶことでマー力ーの分離化を理論値により近づけ,検出精度を向上させることを目的として現品種をスクリーニングした.インドアッサム地方産の品種を用いたのは,幅広い変異を含み,目的とする品種を含む可能性があるからである。すべての供試品種・検定品種は,80%以上の種子稔性,85%以上の花粉稔性を示したため,これらの値を高い稔性の基準とした。出穂期が遅れたために低温障害を受けた1品種を除く33品種のうち17品種は,日本型およびインド型検定品種のいずれと交配しても高いF_1種子稔性を示した。低温障害を受けた2品種を除く32品種のうち8品種は,いずれの検定品種と交配しても高いF_1花粉稔性を示した。全34品種のうち12品種とそのF_1について花粉直径を測定したところ,花粉直径は雄性配偶子の稔性の指標として有用であることが明らかになった。すなわち,花粉稔性が高いF_1ほど花粉直径はその両親と同程度に大きく,花粉直径のヒストグラムでも両親同様に明瞭な単一のピークを示し,大半の花粉が正常に発達していることが示唆された。一方,花粉稔性の低いF_1では両親と比べて花粉直径は小さく,ヒストグラムでは2つないしはそれ以上のピークを示したことから,正常な花粉の発達が阻害されていることがわかった。種子・花粉稔性のいずれも高かったのは,ARC5193,ARC5198,ARC5198,Akula,Calotoc,CP-SLO,ARC5184の6品種であった。QTL解析用集団作成のさい,集団の大きさを限らざるを得ない場合に,これらの品種はF_1稔性からみて親品種の候補であると考えられた。
- 日本育種学会の論文
- 1997-06-01
著者
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