稲の穂の形態に関与する6種の主働遺伝子の作用
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
稲の穂の形態に関与する6種の主働遺伝子,すなわち,U_r-1(枝梗彎曲),D_n-1(密穂),I_ax(疎穂),sp(短穂),Cl(穎花叢生)およびri(輪生枝梗)の作用を調べた。Ur-1,D_n-1およびClは不完全優性遺伝子であり,I_ax,spおよびriは劣性遺伝子である。実験材料には,それぞれの遺伝子を有する系統と北海道品種イシカリのF_2集団を用いた(Fig.1)。さらに,U_r-1とD_n-1に関しては,北海道品種しおかりを反復親とした同質遺伝子系統を用いた(U_r系統,D_n系統と略称)。なお,U_r-1に関するF_2においては, U_r-1/U_r-1かU_r-1/+,もしくは,U_r-1/+か+/+の表現型による判定が困難な個体があったので,それらの個体はF_3(約50個体)を翌年に育成して遺伝子型を判定した。D_n-1,Clおよびriに関するF_2についても,同様のF_3による検定を行った。本研究で用いた種および粒形質(Table 1)のうち,1穂穎花数(NS)などには以下のような関係がある(村井・木下1983)。NS=SB1×NB1+SB2×NB2×NB1(NB2×NB1=2次枝梗数)すなわち,1次枝梗数(NB1),1次枝梗当り2次枝梗数(NB2),1次枝梗着生穎花数(SB1)および2次枝梗着生穎花数(SB2)は,1穂穎花数(NS)の構成要素とみなしうる。6種の主働遺伝子の穂における形質発現をFig.3に示した。すなわち,それぞれのF_2において,各主働遺伝子についてのホモ型もしくはヘテロ型の平均値を+/+型(不完全優性の場合)もしくは+型(劣性遺伝子の場合,たとえばI_axでは+/+型およびI_ax/+型)の平均値に対する百分率で表わした。U_r-1に関する2組合せのF_2において,U_r-1/U_r-1型の1穂穎花数は+/+型の約2倍であった(Fig.3-(1)と(2))。Ur-1/Ur-1型の1次枝梗当り2次枝便数は,+/+型の209%もしくは152%であった。また,2次枝梗長(LB2)の増加に伴って2次枝梗着生穎花数が増加した。しかし,1次枝梗の上部まで2次枝梗が分枝するため,1次枝梗着生穎花数は減少した。U_r-1/U_r-1型の穂長(LP)と1次枝梗長(LB1)は,+/+型と大差なかった。穂長と1次枝梗長を除いて,U_r-1/+型の値は,U_r-1/U_r-1型と+/+型の中間であった。すなわち,U_r-1は,1次枝梗当り2次枝梗数,2次枝梗着生穎花数および1次枝梗数を増加することによって1穂穎花数を増加すると言える。
- 1994-09-01
著者
関連論文
- イネにおける穂の形態に関与する主働遺伝子Ur1(Undulate rachis1)が収量とその関連形質に及ぼす作用(英文誌和文摘要)
- 稲の穂の形態に関与する6種の主働遺伝子の作用
- イネの低脚烏尖由来の矢要性遺伝子の桿長・節間長に及ぼす作用ならびにその肥料水準に対する反応
- イネの深播条件における出芽力に及ぼす低脚鳥尖由来および他の数種の矮性遺伝子の作用