スーパークラウドクラスターの階層構造にかかわる重力波の力学
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概要
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東進する熱帯のスーパークラウドクラスター(SCC)と、その内部構造としての西進する準周期的なクラウドクラスター(QPCC)の階層構造を、簡単な湿潤過程を組み入れた経度高度断面の簡単な2次元モデルを用いて再現した。モデルの結果は明確な雲活動のライフサイクルを示す。すわわち雲域は浅い下層の雲からはじまり、深い対流雲へと発達し、さらに加熱が上層に集中した後、衰退する。この雲の発達と衰退に応じて重力波の波束が励起され東西に伝播する。西に伝播する波は雲活動と結合して、西進するQPCCを形成する。一方東に伝播する波は直ちには深い雲活動とは結び付かない。下層および中層が十分湿りかつ冷却された後になってはじめて、深い対流雲が発達する。この東向き重力波の伝播による東側での新たな対流雲の準周期的な出現が、QPCCの包絡構造としてのSCCの東進をもたらす。この階層構造の生成において、対流圏上層に加熱率の最大を持つような雲加熱の発達・減衰にともない、2つの鉛直モードの重力波が励起されることが本質的に重要であることが示される。特に浅い鉛直スケールの重力波セルにともなう上向きの気塊の変位が、新たなQPCCの出現において重要な役割を担っている。ただし、外部に起因する東西の非対称性要因が何も無いような状況では東進するSCCも西進するSCCも存在可能である。ベータ効果、平均東西風シアー、WISHE(風速依存エネルギー交換)効果による蒸発の東西非対称などの要因によって東進するSCCが選択されうる。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 2000-08-25
著者
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