小麦作の災害に関する研究 : IV.長雨による1963年産小麦の筑後における被害様相
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概要
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(1)1963年産小麦は長雨によって,稀有の大凶作となった。その被害の最も著しい郡後における被害様相,特に被害に関与した形質について調査が行なわれ,作物災害論上の一試料に供せられる(第1表,第1図)。(2)小麦農林61号について,九州農試生産力検定試験の成績が検討され,また1961年産の材料と1963年産のそれとについて種々の比較が行なわれた。(3)平年(1958〜1962年)産小麦に比較して,1963年産小麦において増加した形質は屑粒重,屑粒重歩合および穂数であり,減少した形質は収量(平年の49%),1穂粒重,1穂粒数,1000粒重および1l重である(第2表)。(4)収量は1粒重と1穂粒数と車位面積あたりの穂数との相乗積の函数であると考えると,1963年産小麦の減収に関与した最大要素は1穂粒数の減少である。このことは各小穂段の着生粒数の減少に起因している。減収に関与した第2の要素は1粒重の減少である(第2・3表,第2・3・4図)。(5)1963年産小麦の品質は極めて悪い。すなわち屑粒重が重く,'屑粒重歩合が大きく,1l量および1粒重が軽い。粒の大きさ(粒長・粒幅・粒厚)が小さくかつ不揃いである。赤かび粒が多く全粒辛の75%に達している。また非かび粒の1粒重は軽く,その頻度分布はPo-isson分布に類似している(第2・4表,第2・4・5図)。(6)1963年産小麦の低収と品質の不良性は長雨による受精障害と寡照,湿害,倒伏,赤かび病の大発生等の不良外囲条件による受精後の粒の肥大の停止或は阻害とに起因すると考えられる。
- 日本作物学会の論文
- 1964-06-30
著者
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