水稲のケイ酸吸収に対する窒素栄養の影響

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1)一般的な栽培条件では,水稲葉身のケイ酸含有率と窒素含有率との間には負の相関関係が認められ,生育全般にわたって同一曲線上に乗り,ケイ酸石灰の施用によってその関係曲線は高ケイ酸含有率側へシフトした.しかし,無窒素栽培を行うとその関係曲線から高ケイ酸含有率側へ外れ,逆にきゅう肥と窒素肥料を併用した多窒素栽培を行うと,幼穂形成期には低ケイ酸含有率側へ外れた.2)ケイ酸石灰を使用した水田における水稲生育期間中の土壌溶液中の溶存ケイ酸濃度は,ケイ酸石灰無施用水田より常に高濃度で推移した.3)多窒素栽培により6月末においても作土1 kg当たり40 mg以上のアンモニア態窒素が残存し,幼穂形成期の水稲葉身の窒素含有率が3.5×10^<-2> g g^<-1>以上の条件では,水稲葉身のケイ酸含有率は3×10^<-2>g g^<-1> 未満となった.4)出穂期および成熟期では窒素吸収量の増加にともない乾物生産量が高まったが,ケイ酸吸収量は頭打ちになった.ケイ酸石灰無施用水田におけるその限界吸収量は,出穂期では約35gm^<-2>,成熟期では約60gm^<-2>であった.5)多窒素栽培におけるケイ酸吸収の頭打ちや抑制は,生育後半についてはおもに水田のケイ酸供給量が制限因子となるが,生育前半(幼穂形成期まで)については土壌中にアンモニア態窒素が多量に存在し,水稲が高窒素栄養状態であることが主因であると推察した.
社団法人日本土壌肥料学会の論文
1992-12-05

水稲のケイ酸吸収に対する窒素栄養の影響

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