水管理による水田耕土の酸化還元状態の変化(第1報) : 現地高収水田の実態
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概要
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広島県東部の芦田川下流の平坦地にある高収田(芦品郡駅家町)と約10km離れて同じ流域にある中国農試場内水田(福山)とにおいて, 水稲生育期間中の耕土の酸化還元状態の推移を調査した.1) 高収田の駅家土壌は固相率が低く, 粗孔隙率が高かった(12.9%)のに対し, 対照田の福山土壌では固相率が高く, 粗孔隙率が低かった(5.6%).2) 駅家土壌は軽度の中干しにより速やかに酸化され, その後の間断灌がい中にもFe^<2+>の生成はほとんどなく, 収穫期まで酸化的に推移した.これに対し, 福山土壌では, 長期間にわたり強度の中干しを実施したにもかかわらず, Fe^<2+>は完全に消失せず, また, 中干し後の間断灌がいによって若干増加して, 還元状態に戻る傾向が認められた.3) 駅家土壌では, 中干し期間中の土壌水分とFe^<2+>割合との間に一定の傾向が認められ, 水分の減少につれてFe^<2+>割合が急速に低下したが, 福山土壌では, その関係はかなり乱れた.また, 水分の減少する割合には, Fe^<2+>割合の低下が緩やかであった.4) 駅家土壌では, 裸地(無作付)においても株間と同様に, 中干しにより土壌が酸化されたが, 福山土壌の裸地では, 中干ししても水分の減少が少なく, 酸化されにくかった.しかし, 株間では水分含量は著しく低下して, 土壌は酸化された.5) 中干し時の耕土の亀裂の生成状態は, 駅家土壌では細く, 数も少なかったが, 福山土壌では大きな亀裂が多く生じた.したがって, 駅家土壌では収縮が小さく, 福山土壌では大きいことがほぼ明らかとなり, 収縮の差異が中干しによって生じた耕土の土塊の内部の酸化還元状態と密接に関係することが推定された.謝 辞 この調査にあたり, 九州大学青峰重範教授に有益な示唆を賜わったことを感謝する.また, 本報告の校閲を賜わった中国農業試験場吉沢孝之博士に感謝の意を表する.
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 1971-08-25
著者
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