気象条件の異なる年次におけるトウモロコシ葉身直立姿勢の子実収量への影響
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概要
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トウモロコシの第1雌穂より上部の葉をその登熟期間に直立させ,その影響が,異なる気象条件(特に日照条件)でいかに変化するかを,1974,75,76年の3年間の結果から検討した. 品種は3年間アズマイ***ーを供試し,76年にはこれにホクユウを加えた. 栽培密度は,74年には,3000,6000,9000,75年には,4000,6000,8000,10000,76年には,6000,9000,12000本/10aであった. 栄養生長期間の日射量には3ヵ年ともほとんど差がみられなかったが,登熟期間には差が大きく,1970〜76年の平均値に対して,74年は88.8%,75年は111.8%,76年は77.2%であった. 子実収量は登熟期間の日射量に大きく左右され,75年に最高で,76年には最低,74年は両年の中間であった. 葉身直立姿勢の子実収量への影響は低収年に大きく,多収年にはほとんどみられず,中間年には密植区でのみ見られた. 葉身直立姿勢の子実:茎葉重比への影響は,その値の低い場合,すなわち,トウモロコシが光条件に恵まれずその子実生産能力を十分に発揮できないような条件で,大きく現われていた. 単位面積当りの粒数をみると,葉身直立姿勢の影響の見られなかった75年にはかなり多く,その影響のみられた76年にはかなり少なかった. 葉身直立姿勢は粒数を増大させており,これが同化産物の子実への転流の向上に寄与したものと考えられた. 葉身直立姿勢の処理直後に測定したLAIの値には,各年次とも葉身姿勢処理間で差が認められず,栄養生長量には差がなかったものと考えられた. したがって,葉身直立姿勢による粒数の増大は,光合成産物の不足による雌穂不稔の発生の危険の大きい絹糸抽出期後の約3週間に,受光態勢が改善されたことで光合成産物の不足が抑えられたことによると判断された. 葉身直立姿勢の効果に年次間差のあったことから,その効果の発現には日射量が関係し,少照年次には比較的低栽植密度でも現われるが,多照年次にはかなり密植条件でなければ現われないものと考えられた. 以上から,トウモロコシにおいては,葉身が直立していることは,夏期に日照の不足しやすい地域での収量安定,あるいは密植条件での収量向上にとって,重要な形質であると推察された.
- 日本作物学会の論文
- 1980-03-30
著者
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