作物の診断学的研究とその応用 : 米の化学的特質と食味向上に関する研究
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概要
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栽培上安全でしかも多収をもたらす品種は一般に食味が勝れないとされている. 一方, 食味が特に良いとされている品種は限られており, 倒伏し易く, 必ずしも良質米とはならない. そこで著者らは"安全・多収・良質・美味・滋養"を目標として, 味が劣るとされている多収米を化学的に診断し, 食味を向上させるための実験を実施し, 次の結果を得た. (1) 生産年次および生産地を同じうする数品種を用い, 白米の遊離アミノ酸を比較した結果, コシヒカリは抜群にグルタミン酸, アスパラギン酸を多く含んでおり, 次いでササニシキ, トヨニシキ, レイメイ, ボウネンワセの順に含量が低くなつていることが認められた. (2) 白米中にはグルコース, シュークロースおよびマルトースの3種の主な糖が含まれているが, トリプシン処理により, マルトトリオースと思われる新たな糖が遊離してくることが知られた. またマルターゼ処理により, 多量のグルコースが出現することがわかつた. そしてトリプシンとマルターゼを混合して白米に作用させても互に酵素反応を阻止しないことが認められた. (3) 白米にトリブシンを作用させると, グルタミン酸, アスバラギン酸をはじめ, アラニン, バリン, ロイシン等のアミノ酸が多量に放出され, 炊飯して官能テストを行なつた結果, 対照区に比べて食味が向上し, やわらかくなつたことが認められた. (4) プラストメーターで炊飯米の物理性を調べた結果, トリプシン処理区は対照区に比べ, 明らかに軟かさを増していることが観測され, トリプシンが米の触感にも影響をおよぼしていることが裏付けられた. 以上の結果から, 酵素を適用することにより, 米の化学性を調整し, その結果物理性にも影響をおよぼさせ, 味が劣るとされている多収性品種をさらにおいしく味わい得ることの可能性が見出された.
- 日本作物学会の論文
- 1974-12-30
著者
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