ジアゼパムは咬合障害付与に伴うラット前頭皮質ドーパミン放出を抑制する(第486回大阪歯科学会例会抄録)

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補綴治療を契機として,心身症や神経症的反応を示す症例の報告がある.これらの症例は咬合の変化ガスドレッサーとなりストレス反応を引き起こした結果,精神医学的な症状を招く可能性を示唆している.しかし咬合の変化と精神的ストレス反応との関係についての研究は十分になされていない.2000年に吉川は咬合障害を付与したラットにおいて摂食時ドーパミン(以下,DAと略す.)放出は増大すると報告し,咬合障害と情動の関連を示している.本実験では咬合障害を付与したラットの前頭皮質DA放出が増加するのは不安を含めたストレス反応に起因するという仮説を立て,検証することとした.我々は抗不安作用を持つベンゾジアゼピン系ジアゼパムが咬合障害を付与したラットの前頭皮質DA放出に及ばす影響を分析し,仮説の検証を行うこととした.前頭皮質中のDA量の測定は脳内マイクロダイアリシス法を用いて行った.実験動物はSD系雄性ラット36匹を用いた.各実験において対照群と咬合障害群の2群に分け,おのおのをn=6とした.実験的咬合障害は厚さ0.5mmのステンレス板を長さ2mm,幅1mmに切断したものを用いた.すべての実験で□腔内処置前1時間から摂食後3時間までのドーパミン放出量を測定した.実験1では□腔内処置より3時間経週後,固形飲料3.5gを与えて摂食させた.実験2ではジアゼパムを実験3では生理食塩水を摂食前に腹腔内投与した.実験終了後,すべてのラットは適量のベントバルビタール投与により安楽死させた.その後,脳切片を作製し,ガイドカニューレ挿入部位の確認を行った.実験1の結果,実験群間で平均DA放出量に有意差が認められた(p=0.01).咬合障害群において咬合障害付与後3時間のDA放出量に変化は認められなかったが,摂食後DA放出量は経過時間に伴い増加した.前頭皮質におけるDA放出量の変化はストレスにより生じる不安という情動反応の指標となると考えられる.この結果,咬合障害付与状態での摂食はラットの情動に影響を及ぼすと考察された.実験2の結果,実験群間で平均DA放出量に有意差は認められなかった(p=0.81).抗不安薬によって摂食時DA放出の増加が抑制されたことより,咬合障害付与状態での摂食時DA放出量増大は不安による情動の変化に起因することが立証された.実験3の結果,実験群間で平均DA放出量に有意差が認められた.(p=0.02)へ咬合障害群において咬合障害付与後3時間で生理食塩水投与に続いて摂食させたあとのDA放士量は経過時間に伴い増加した.しかし対照群のDA放出量は摂食後も変化しなかった.この結果,本実験における腹腔内投与という手技自体がストレッサーとしてDA放出量に及ばす影響はなかった.以上の結果よリ咬合障害はストレッサーとして中枢に影響を及ぼし,その結果不安を含めたストレス反応を引き起こすことが明らかとされた.
2003-03-25

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