露出セメント質に対するスケーリンゲおよびルートプレーニング前のレーザー照射の応用について(第486回 大阪歯科学会例会 抄録)
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概要
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歯周疾患によって、歯周ボケットが形成されると,ポケット内あるいは口腔内に露出したセメント質は,その表面には様々な細菌が付着し,結果としてセメント質は,変性,壊死に陥る.したがって,この露出セメント質を歯周治療上,とりわけ,破壊された歯と歯肉を再び正常状態に近づけること,すなわち,新付着を獲得しようとする際に,どのように処置するかをめぐって,いろいろ論議されているところである.たとえば,エンドトキシンのセメント質への浸透はきわめて表層であり,また,同部の過石灰化は、表層部に限られ,しかもそれほど著しくないという報告などもある.一方,これまでに,演者らの教室では,露出セメント質表面あるいは各種処置を施した露出セメント質表面について,従前よリ行われている×-ray microanalyzer(以下、XMAと略す.)と試料にX線を照射し,そこから放出される光電子の運動エネルキーを測定し物質表面の構成元素や化学状態に関する情報を得ようとする分析方法であるX線光電子分光分析法(以下,ESCAとする.)で詳細に検討するとともに,bacterial plaqueの根面への付着に深い関わりがあるとされているその接触角についてあわせ検索した結果,それら最表面は,XMAなどによるこれまでの測定方法によるμmの深さとは異なった化学構造および表面性状を有していることを逐次報告してきた.とくに,これまでは,根面のエンドトキシン不活性化のために最近用いられるようになってきたレーザー処理根面について,各種条件下におけるYAGレーザー,CO_2レーザー照射および両者の比較などについて報告した.しかしながら,これまでの実験では,露出セメント質をスケーリングおよびルートプレーニング後にレーザーの照射を行ってきたが,今回は,その順序を逆に,すなわち、レーザー照射したあとにスケーリングおよびルートプレーニングを行ったものとこれまでに行ってきた術式を比較検討するために一連の研究と同様な方法で観察した.被検材料:診査,検査の結果,抜歯と診断され,しかも,過去にスケーリングやルートプレーニング処置を行っていない歯周疾患罹患歯の露出根面に1)露出根面をキュレットタイプスケーラーにて歯垢や歯石を可及的に除去したスケーリング群(以下,S群とする.)2)露出根面をキュレットタイプスケーラーにて滑沢となるようプレーニングした群(以下,R群とする.)3)スケーリングおよびルートプレーニング後にYAGレーザーで10,20および30 J/cm^2を照射した群(以下S_1およびR_1,Y_1,Y_2,およびY_3群とする.)4)スケーリングおよびルートプレーニング前にYAGレーザーで10,20および30 J/cm^2を照射した群(以下,S_2,およびR_2,Y_1,Y_2およびY_3群とする.)5)スケーリングおよびルートプレーニング後にCO_2レーザーで10,20および30J/cm^2を照射した群(以下,S_1およびR_1,C_1,C_2およびC_3群とする.)6)スケーリングおよびルートプレーニング前にCO_2レーザーで10,20および30J/cm^2を照射した群(以下,S_2およびR_2,C_1 C_2およびC_3群とする.)の処置を施した. XMAによる分析:観察試料を通法によリカーボン蒸着後,日立S-560型走査型電子顕微鏡とそれに接続したKevex-7000エネルキー分散型X線分析計およびデーター解析用コンピュータとCRTディスプレイを用いて分析を行った.また,各種の処置を施した露出根面の形態学的観察のため,走査型電顕写真もあわせ撮影を行った.ESCAによる分析:X線光電子分析装置(島津製作所,Type 750)を用い,通法に従い試料表面に存在する元素の定性分析を行うとともに,結合エネルキー状態を示すピーク位置および相対濃度による定量分析を行い,得られた結果をデータ処理装置(三菱電機,Multi-16 ; Software, Espac 200)を用いて解析した.接触角の測定:各試料面に再蒸留水を1μmを滴下し,独自の写真装置にて液滴を撮影,そのフィルム上の滴滴の高さと半径を計測して,接触角を求めた.結果1)XMAによるCaおよびPのX線スペクトルには,各実験群間でさしたる変化は認められながったが,Ca,PおよびCa,P比は各実験群間による差はほんのわずかに認められ,各数値とともにS群が最大値,ルートプレーニング後両レーザーを30 J/cm^2照射した群(R_1+Y_3およびR_1+C_3)が最低値を示した.2)SEM像では,各実験ともにキュレットタイプスケーラーによる条痕が認められたが,レーザー照射の後先による表面構造の差は認められなかった.3)ESCAによるCa,P,O,F,Nの相対濃度は,各実験群間に有意の差は認められなかった.また,セメント質再表層の元素の結合状態は,S群とR群を比べたとき、CaおよびPの結合エネルキーは,R群の方が高いエネルキー側にシフトする傾向を示したが,統計的に有意の差は認められず,さらに,レーザー照射の後先を比べた場合,若干の結合エネルキーシフトを表す傾向を示したが,有意の差は認められなかった.4)接触角については,S群が最低値,スケーリング後両レーザーを30J/cm^2照射した群(S_1+Y_3およびS_1十C_3)が最高値を示した.以上の結果よリレーザー照射の後先により,セメント質表面成分あるいは接触角にはさほどの変化は認められないことが確認できた.
- 2003-03-25
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