口臭検査装置の新規開発(第487回 大阪歯科学会例会 抄録)
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概要
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近年,消臭作用があるとされ,市販されている洗□剤のシェアーが高くなってきたことにもよるが,口臭に対する一般大衆の関心は年々深まってきている.したがって,おのずから,それを主訴として来院する患者が,多くなってきている.また,そのなかには心身症ではないかと思われるような,深刻に考えている患者も少なくはない.もともと,口臭の根元とされている悪臭成分は,アンモニア,アミン類,硫化水素,メチルメルカプタン,インドールなどであるが,これらは口腔内に存在する蛋白質が,数多く生息する□腔内細菌の酵素活性により,分解された産生物質であるとされている.この口臭成分を実験的には,大きな設備を必要とするgaschromatographyにより分析する方法があるものの,実際の臨床の場では,嗅覚による主観的方法、あるいは,客観的な方法としては,メチルメルカプタンあるいは揮発性硫化物などの濃度をセンサーを利用し,とらえる市販の口臭探知器による検出方法がとられている.しかしながら,主観的に明らかに口臭があると判断した患者でも,前述の市販探知器で測定した結果,正常値を示すケースも多く,同時に,データーのばらつきなども少なくない.そこで,われわれは,メチルメルカプタンではなく,アンモニアをターゲットにして,新しく口臭検査装置を開発し,以下のような実験を行い若干の知見を得たので報告する.1)口臭の検査装置について:われわれの開発した□臭検査装置は,まずその測定に際しては,被験者に尿素水(200mg/20mL)を30秒間口に含ませ,5分経過後50mLの口腔内ガスを吸引し,検知管と反応させ,検知管の変色した長さでアンモニアの濃度(ppm)を測定するものである.2)gaschromatographyで分析したメチルメルカプタンの量とわれわれの関発した□臭検査装置で測定したアンモニア量について日本環境衛生センターの嗅覚スクリーニング試験に準じた判定で口臭のある患者12名のgaschromatographyで分析したメチルメルカプタンの量と□臭検査装置で測定したアンモニア量との間には有意な正の相関性が認められた.このことよリ,われわれの開発した□臭検査装置は,口臭を客観的に評価できる秀ねた装置であるといえる.3)口臭のない者の実験結果:前述の判定基準により,口臭のない者を対象として,ブラッシング前後,食事前後,食後のブラッシング後および食事後1時間半のアンモニア量を測定した結果,食直後に数値はやや低下していたが,統計学的には有意の差は認められず,その他の時期においても,さしたる変化はなかった.このように,□臭のない者の測定結果では,アンモニア量は16ppm以下であり,それが,正常範囲といってさしつかえない.4)アンモニア量と歯周組織の臨床的および歯周ポケット内微生物の動態との関連性について前述の判定基準により,明らかに口臭のある患者12名を対象として,アンモニア量と歯周組織の臨床的観察項目(PCR値,GI値,GCF量,歯周ボケットの深さ)および位相差顕微鏡による歯周ポケット内微生物の動態との関連性を検討した.その結果,臨床観察項目のなかで,アンモニア量とPCR値の間に有意な正の相関性が認められた.また,アンモニア量とGI値,GCF量および歯周ポケットの深さともに,やや相関性は認められたが,有意差はなかった.アンモニア量と位相差顕微鏡による歯周ポケット内総徹生物数およびアンモニア量と総微生物に占める運動性徴生物の構成率は両者ともに有意な正の相関性が認められた.5)歯周基本治療を施した後の状態を初診時と比較検討を行った結果について4)の実験と同様に被験者は□臭のある患者12名とした.臨床観察項目あるいは歯周ポケット内微生物の観察方法は4)の実験と同様である.また,臨床的観察,歯周ポケット内徹生物の観察およびアンモニア量の測定の時期は初診時およびブラークコントロール,ルートプレーニングなどを主体とした基本治療終了後の再評価の時点とした.臨床的パラメーターのうちPCR値,GI値および歯周ポケットの深さは被験者12名ともに,初診時に比較して基本治療後の方が低下していた.また,GCF量は横ばい状態の症例もあったが,大半は基本治療後の方が低下していた.さらに,位相差顕微鏡による歯周ポケット内総微生物数ならびに総微生物に占める運動性徴生物の構成率は全症例ともに,初診時と比較して基本治療後の方が数値は低下していた.また,アンモニア量は各症例ともに,初診時と比較して基本治療後の方が数値は低下していた.さらに,アンモニア量と臨床的パラメーター4項目ともに有意な相関性が認められた.また,アンモニア量と位相差顕微鏡による歯周ポケット内総微生物数および,アンモニア量と総微生物に占める運動性徴生物の構成案はともに正の相関性が認められた.以上のことよリ,われわれが新し<開発した口臭検査装置はgaschromatographyのような実験室でしか測定できない大きな設備も必要とせず,歯科診療のチェアーサイドで検査ができ,再現性があると同時に□臭患者の客観的評価に大さく寄与することが確認できた.したがって,本装置は今後,実際の臨床の場における□臭患者の診断,評価あるいは□臭心身症などの患者のカウンセリングに,大いに役立つものといえる.
- 2003-03-25
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