ラット抜歯窩創傷治癒過程にヒアルロン酸溶液が及ぼす影響

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最近,高齢者の口腔乾燥症治療に,保湿効果の高いヒアルロン酸水溶液を用いて,症状改善に効果があるとの報告がある.著者らは,外来性ヒアルロン酸の抜歯窩局所投与を実験的に試み,抜歯後の創傷治癒過程に及ばす影響について組織学的調査を行った.実験動物には,生後5週齢のWistar系雄性ラット48匹を使用した.実験動物に全身麻酔を施し,下顎両側第一臼歯を抜去した.実験群にはヒアルロン酸溶液および対照群には水だけの塗布を、抜歯直後よリ1日2回行った.実験開始から各3,7,12日後ごとに両群各8匹の実験動物をそれぞれ安楽死させ,通法に従い,矢状断で厚さ12μmの連続凍結切片を作製した.作製した切片にヘマトキシリン・エオジン重染色を施し,光学顕微鏡にて組織学的観察を行った.また,上皮層を中心に画像解析を行い,上皮再生の促進評価判定に用いた.3日群では,対照および実験の両群とも新生上皮の伸展はあまりなく,抜歯窩は血餅でみたされた状態で,治癒には大差なかった.7日群では,実験群は抜歯創の閉鎖を認めたが,対照群は閉鎖がまだ完了していなかった.新生骨形成に関しても,実験群の方が進んでいた.さらに12□群では,対照群は抜歯窩部の上皮層が全般に薄く,上皮の基底細胞層と固有層の境界の起伏はゆるやかであった.実験群はその上皮層が一部で肥厚し,両層境界の起伏の形態は棘状であった.両群において明瞭な形態的差異を認めた.また画像解折からも上皮層の断面積が大きいことや,上皮の突出度が対照群と大きく異なることから,実験群においては基底細胞の活性が高く上皮細胞の増生が旺盛になっていると考えられた.以上のことから,外来性のヒアルロン酸を抜歯創に投与することは,その治癒を阻害することはなく,むしろ治癒を促進する可能性があり,特に上皮および結合絹織の治癒促進に対して有効であると示唆する知見が得られた.
2003-03-25

ラット抜歯窩創傷治癒過程にヒアルロン酸溶液が及ぼす影響

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