オトガイ舌筋活動からみた上気道開通性の定量測定とセボフルランの影響
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概要
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オトガイ舌筋(GG)は上気道拡大作用筋で,努力性吸気時のように咽頭腔が虚脱・閉塞する方向に働いた場合,拮抗的に活動性を高める作用がある.この筋活動の背景には上気道腔の内圧変化に反応する神経反射が関与するといわれている.一般的に吸入麻酔薬はこれらを抑制すると考えられるが,その影響を検討した報告はみられない.そこで本研究は,咽頭腔に陰圧を負荷させる動物モデルを作製し,GGの筋活動を定量化することでセボフルランの影響を検討した.さらに高炭酸ガス血症がこれらの反射機構にいかなる影響を及ぼすかも検討した.実験材料および方法実験には,体重約2kgの家兎を用いた.笑気・酸素・5%セボフルラン麻酔下で頸部正中からGGを露出し,電極を挿入して筋電図を生体情報解析プログラムに取り込みながら,自発呼吸下で以下の実験を行った.実験1.上気道閉塞時の筋活動とセボフルランの影響(n=5)人為的に上気道を閉塞させた場合の筋活動の変化と,それに対するセボフルランの影響,閉塞部位を変えることによる筋活動の相違を観察した.方法は,気管を露出後,鼻孔よりチューブを挿入し,鼻孔・咽頭腰間に空気の漏れがないようなモデルを作製して次の異なる2つの部位で人為的に気道閉塞を行った.1)鼻孔閉塞鼻孔チューブを鉗子で一時的にクランプし,努力性呼吸運動によって発生する咽頭腔圧の変化と筋電図を以下のセボフルラン濃度下で検討した.I群:0.7%, II群:4%2)気管閉塞咽頭腔圧測定部位より肺側の露出気管を一時的にクランプし,1)と同様に努力性呼吸運動時の筋電図を検討した.本操作は,0.7%セボフルランのみで行い,鼻孔閉塞のI群との相違を比較した.実験2.咽頭腔への陰圧負荷に対する筋活動とセボフルランおよびCO_2吸入の影響(n=8)1)陰圧負荷に対する筋活動とセボフルランの影響2つの気切孔から咽頭側と肺側に向けて2本のチューブを挿入した.肺側チューブは麻酔回路に接続し,咽頭側チューブを脱気用シリンジに接続して,鼻腔・口腔・咽頭腔で1つの閉鎖腔となる上気道分離モデルを作製した.シリンジを吸引して咽頭腔に陰圧負荷を行い,咽頭腔圧の変化と筋電図を以下のセボフルラン濃度下で検討した.A群:1%, B群:4%2)CO_2吸入の影響吸入気中にCO_2を0.3L/分流入させ,1)と同様の操作で咽頭腔に陰圧を与え,咽頭腔圧の変化と筋電図を以下のセボフルラン濃度で記録した.Aco_2群:1%, BCO_2群:4%なお,各条件下で得られた現象を定量化するため,筋電図の整流波形積分値を筋活動の変化率とし,咽頭腔の最大陰圧の絶対値をpeak pharyngeal pressure(Pp)として両者の関係を検討した.結果および考察実験1:1)努力性呼吸運動がみられ,咽頭腔の陰圧度が漸増した.Ppと筋活動の変化率との関係は,I群では正の相関関係を認めたが,II群では認められなかった.2)1)と同様の努力性呼吸運動が生じたが,咽頭腔圧の陰圧増加に同期した筋活動の増幅はみられなかった.実験2:1)Ppと筋活動の変化率との関係は,A群では正の相関関係を認めたが,B群では認められなかった.2)Ppと筋活動の変化率との関係は,Aco_2群,Bco_2群ともに相関関係は認められなかったが,ACO_2群では全体的に筋活動の増加度が大きい傾向を示した.以上より,努力性吸気時のGGの筋活動の増幅は咽頭腔の陰圧により生じる反応で,人為的な陰圧負荷でも再現できることが明らかとなり,咽頭腔の圧受容器を介する反射機構であることが示唆された.この反射は高炭酸ガス血症で増大するが,セボフルラン深麻酔で強く抑制されることが明らかとなった
- 2002-06-25
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