喪失に至ったテレスコープ義歯支台歯に関する予後因子のCHAID分析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
装着効果の確かさと順調な経過が高く評価されているテレスコープ義歯症例について,支台歯の喪失という義歯の運命を左右する重大なトラブルに注目して,装着後の経過を追ってリスクファクター(予後因子)を明らかにすることを目的とした.28名の患者(女性22名,男性6名)に装着した34装置の支台歯128歯を対象とした.装着時の年齢は平均57.5±9.3歳で,観察期間は平均55.0±33.9か月であった.歯根破折や,槽間中隔が根尖側1/3を越えて骨吸収が進んだ場合,歯の動揺がペリオテスト値50以上を示した場合,そして患者が抜歯に同意せずコーピングで対応した場合,これらのいずれかの条件の場合を支台歯喪失,すなわちエンドポイントとした.支台歯生存率に関わる予後因子として,装着時の年齢による違い(x1),男性と女性の違い(x2),Eichnerの分類による咬合支持域の違い(x3),上顎と下顎の違い(x4),遊離端欠損部に隣接しているか否か(x5),歯種による違い(x6),エックス線像からみた槽間中隔部の骨吸収が歯根長1/2までと歯根長1/2〜2/3までの違い(x7),有髄歯と無髄歯の違い(x8),それぞれを取り上げた.装着直後〜2年,2〜3年,3〜4年,4〜7年,7〜9年の支台歯の生存・喪失に関するデータを目的変数に,8つの予後因子(x1〜x8)それぞれを説明変数に,CHAID分析した(有意水準5%).その結果,装着直後から2年において,有意に最も強く関わる予後因子としてx6を見出し,切歯と犬歯・小臼歯・大臼歯の2つのサブグループに分割された(p=0.0046).次いで,切歯に関する予後因子にx4を見出した(p=0.018).装着3年から4年において,有意に最も強く関わる予後因子はx5であった(p=0.0076).装着7年から9年においても,有意に最も強く関わる予後因子はx5であった(p=0.023).次いで,遊離端欠損部に隣接する支台歯に関わる予後因子にx3を見出し,Eichnerの分類C・B4とB3・B2の2つのサブグループに分割された(p=0.039).しかし,装着2年から3年,装着4年から7年の各区間内において有意な予後因子は見出されなかった.結論として,ある特定の因子が,装着期間を通して喪失に関わるのではないことがわかった.具体的には,1)装着直後から2年での上顎切歯の支台歯,2)装着3年から4年での遊離端欠損部に隣接した支台歯,3)装着7年から9年でのEichnerの分類CあるいはB4で遊離端欠損部に隣接した支台歯,の条件で低い生存率が得られた.
- 2002-06-25
著者
-
田中 昌博
大阪歯科大学有歯補綴咬合学講座
-
川添 尭彬
大阪歯科大学有歯補綴咬合学講座
-
野間 緑
大阪歯科大学有歯補綴咬合学講座
-
川添 尭彬
大阪歯科大学 大学院 歯科補綴学 専攻
-
田中 昌博
大阪歯科大 有歯補綴咬合学
-
野間 緑
大阪歯大・有歯補綴
関連論文
- 介護保険施設における食事に関する調査
- リン酸カルシウム系結晶化ガラスを用いたブリッジの臨床試験について
- 社会保険上の請求頻度と卒前ファントム実習からみた基本的なテクニカルスキル
- カリエスリスクの高い患者のPMTC施術後における細菌数の変化
- 患者と医療スタッフ間の連携を目指す歯科用POMR : 第2報 歯科用POMRの導入による診療録の質の向上
- 患者と医療スタッフ間の連携を目指す歯科用POMR : 第1報 開発と運用の実際
- 歯科臨床検査所見からみた短縮歯列と健常歯列との比較
- 歯冠用硬質レジンの3点曲げ強さに加熱重合が及ぼす影響
- 歯科医学教育における情報科学のあり方
- ボクシングにおける攻撃動作時と防御動作時の咬合接触について
- P-65 セルフアドヒーシブセメントの接着強さに湿度環境が与える影響(臨床応用1,一般講演(ポスター発表),第54回日本歯科理工学会学術講演会)
- 繊維強化コンポジットで補強したハイブリッド型レジンの曲げ強さ : 繊維強化コンポジットの配置の影響
- 人工視覚技術を応用したシェード解析装置 : 測定角度がシェード分布図に及ぼす影響
- 人工視覚技術を応用したシェード解析装置 : 隣在歯がシェード分布図に及ぼす影響
- 人工視覚技術を応用した歯のシエード解析装置について
- セルフアドヒーシブセメントの接着強さにプライマーが与える影響
- 歯科用ジルコニアフレームと前装鋳造冠フレームの表面粗さの比較
- 社会福祉施設体験学習における実習前の講義の効果
- 超音波診断装置を用いた食塊送り込み運動の観察 : 有歯顎群と義歯群の比較検討
- 2 固定性と可撤性の異なった補綴装置を装着した高齢者の口腔内環境に関する縦断研究(第515回大阪歯科学会例会)
- 咀嚼の想像による大脳皮質の賦活状態
- 顎関節cine-MRI撮像時におけるスライス方向設定に関する研究
- 関節円板前方転位症例におけるcine-MRI上の関節円板の変形性について
- ^P-MRSからみたラット咬筋の強縮の疲労回復過程
- 187極表面電極による咀嚼筋のMUAP伝播の観察
- 習慣性咀嚼側と add 画像法を用いた咬合接触像に関する研究
- 2.習慣性咀嚼側とadd画像法を用いた咬合接触像に関する研究
- 動揺度自動診断システムを用いた歯およびオステオインテグレーテッドインプラントの動揺測定
- 簡便な歯の動揺度テスタ : 第2報T-Mテスタの臨床評価
- 咬頭嵌合位における咬みしめ強度上昇に伴う咬合接触力の左右ならびに前後的バランスについて
- Electromyography analysis of prematurecontract
- Influence of the Relaxation Splint andStabilization Splint on the EMG Parameters ofthe Masticatory Muscles
- 急速な開口運動時に認められる頭部運動の運動プログラミングについて(一般口演,第40回記念学術大会)
- 1 短縮歯列と完全歯列の臨床検査法による比較(第498回 大阪歯科学会例会)
- 2 健常者の咬頭嵌合位を安定させる方向成分別の咬合接触面積の解析(第507回 大阪歯科学会例会)
- 急速な開口運動での運動プログラミングに関する研究
- 各年代別の咬みしめ強度の増加に伴う咬合接触状態の三次元解析 : 上顎第一大臼歯について
- 介護保険施設入院・入所者の口腔内咬合支持状態と食事メニューの関連性
- 介護保険施設における食事メニュー決定に関する調査
- 健常者の上下顎第一大臼歯間における咬合接触状態の三次元解析
- 頭蓋顔面系を基準とした咬合状態の定量化
- 三次元咬合診査法の再現性と測定精度
- 頭蓋顔面系を基準とした3次元咬合診査法の確立 : 第2報 頭部エックス線CTの利用
- テレスコープ義歯の支台歯生存率に関わる予後因子のCHAID分析
- 咬頭嵌合位での成長に伴う咬合接触バランスの安定性について
- 頭蓋顔面系を基準とした3次元咬合診査法の確立
- 咀嚼進行中の舌運動, 下顎運動および咀嚼筋筋活動の正規化包絡線分析
- ガムチューイングにおける下顎運動, 舌運動および咀嚼筋筋電図の正規化包絡線による分析の試み
- 歯列咬合接触状態の3次元構築法の開発
- 高齢者での補綴装置の違いが唾液検査結果に及ぼす影響
- クリニカル・クラークシップを取り入れた卒後臨床研修教育の経験例
- 国家試験受験ストレスが歯学生の心身健康に及ぼす影響 : 大阪歯科大学学生の調査から
- 光重合型オクルーザルスプリント用材料の臨床評価
- アテロコラーゲンスポンジ挿入抜歯窩におけるコンピューター断層撮影による骨治癒の臨床検討
- リン酸カルシウム系結晶化ガラス・ブリッジの寸法精度に及ぼす因子の検索
- ハイブリッドセラミックスの人工歯咬合面への応用 : 表面処理条件および圧接荷重が接着強さに及ぼす影響
- P-43 ハイブリッドセラミックスと硬質レジン歯の接着に関する研究
- 光ファイバーセンサーを応用した表面あらさ測定について
- 三次元咬合検査法からみた上顎臼歯における年代別の咬合接触状態
- セルフアドヒーシブセメントにおける接着強さの経時的変化
- T-Scan II^【○!R】システムを用いた咬頭嵌合位における咬合接触状態の解析パラメータ
- 2. 咀嚼の自覚的lateralityに関する調査(昭和61年度日本補綴歯科学会関西支部学術大会講演要旨)
- 口腔内での接着操作における金銀パラジウム合金に対するセルフアドヒーシブセメントの接着性能の評価
- B-27 測定点の違いにおける歯の動揺度の影響に関する研究
- 1学年を対象とする社会福祉施設体験学習の導入
- 1 連続的急速最大開口運動時における胸鎖乳突筋の活動様相の変化について(第508回 大阪歯科学会例会)
- 6 ベンチプレス動作時における顎口腔機能の様相(第506回 大阪歯科学会例会)
- ベンチプレス動作時における顎口腔機能の様相
- 口腔内環境のローリスク者への可撤性床義歯装着後における変化
- ボクシングにおける攻撃動作時と防御動作時の咬合接触について
- 高齢全部床義歯装着者のガムチューイング時における咀嚼筋筋活動様相の正規化筋電図包絡線による若年者との比較
- 2 咬頭嵌合位の安定性と顎機能障害との関連に関する研究(第514回 大阪歯科学会例会)
- 1 急速な開口運動における胸鎖乳突筋の学習に関する研究(第514回 大阪歯科学会例会)
- 共振周波数解析装置を用いたインプラントの骨内安定性の経時的観察
- インプラント周囲の硬さの違いが非接触型共振周波数解析装置の測定結果に及ぼす影響
- 急速な下顎随意運動に伴う胸鎖乳突筋の共同筋活動に関する研究 : 第2報 開口運動時に認められた予測的頭位調節機構について
- 急速な下顎随意運動に伴う胸鎖乳突筋の共同筋活動に関する研究 : 第1報 咀嚼筋との活動開始時期の比較について
- T-Scanシステムからみた正常有歯顎者の側方滑走運動時における咬合接触
- 顎関節部の機械モビリティの経日変動について
- 安静時における顎関節部深部温
- T-Scanシステムからみた咬頭嵌合位での咬合接触バランスについて
- 7. 咬合嵌合位での咬合接触の前後的, 左右的バランスについて
- T-Scanシステムからみたクレンチング時の前後的, 左右的咬合バランスについて
- 各種食品咀嚼時における舌運動観察に関する超音波画像の応用
- 1 チューイングに伴うガムの食品テクスチャーについて (第437回 大阪歯科学会例会)
- 咬合高径が側頭筋の筋繊維伝導速度および筋電位周波数成分に及ぼす影響
- 健常有歯顎者の下顎臼歯における三次元咬合力ベクトルの解析
- 咬合挙上が咬筋の筋線維伝導速度および筋電位周波数成分に及ぼす影響
- 低域特性に優れた加速度センサによるMicrovibrationの測定
- 光ファイバーセンサーによる変位量測定原理の歯科領域への導入
- 急速な下顎随意運動時における胸鎖乳突筋の筋活動開始時期について
- MEを応用した顎変形症患者の機能状態の評価
- 安静時の咬筋深部温に関する研究
- 2 昭和63年におけるクラウン・ブリッジ装着状況の実態および経年的推移 : 第1報 単独クラウン (第400回 大阪歯科学会例会)
- 食品咀嚼時における下顎運動と舌運動の関連性
- 咀嚼筋の圧痛の定量化と、その臨床応用
- 8 義歯による咬合支持の回復が食塊送り込み運動の時間に及ぼす影響(第485回 大阪歯科学会例会)
- 広い年齢層の疫学調査に応用可能な口腔機能評価方法の確立 第一報 被験食品の選択
- 高齢全部床義歯装着者の嚥下時における舌運動の様相
- 咀嚼運動を伴う嚥下時における舌運動の様相(第26回学術大会)