グルココルチコイド投与ラット舌の創傷治癒過程におけるbasic fibroblast growth factorの発現と局在に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
グルココルチコイド(以下, GCと略す.)は強力な抗炎症作用と免疫抑制作用を有し, 種々の疾患の治療に用いられているが, 創傷治癒においては肉芽組織の形成を抑制し, 治癒を遅延させる.この機序としてGCが血管新生を抑制していることが考えられるが, 十分解明されていない.一方, basic fibroblast growth factor(以下, bFGFと略す.)は代表的な血管増殖因子として, 腫瘍や炎症巣における血管新生との関連が研究されている.そこで創傷治癒過程におけるbFGFの発現と局在を検索し, GCによる治癒遅延の機序を究明した.実験には6週齢の雄Wistar系ラットを用い, 実験群にはプレドニゾロン25mg/kgを, 対照群には生理食塩水をそれぞれ実験終了前日まで連日背部皮下に注射した.プレドニゾロンを4週間投与後に舌の正中部を舌尖から舌根に向け, かつ舌背から舌下面に至る約10mmの長さの切離創を形成した.術後1〜10日の治癒過程を病理組織学的, 免疫組織科学的に観察するとともに, RT-RCR法を用いてbFGFmRNAの発現性を検索した.対照群は, 術後3日では毛細血管と線維芽細胞の増生がみられ, 5日では肉芽組織の形成が進み, 10日で瘢痕治癒していた.bFGFは術後1〜10日のマクロファージ, 毛細血管内皮細胞, 線維芽細胞に陽性反応がみられ, bFGFmRNAは術後1日から発現し, 3〜5日で最も強くなっていた.一方, 実験群では, 術後3日でも毛細血管や線維芽細胞の増生は少なく, 5日でも肉芽組織の形成は遅延していた.またbFGFの陽性反応は微弱で, bFGFmRNAは術後2日から発現し, 5〜7日で最も強くなっていた.以上の結果から, ラット舌の創傷治癒過程においてGCはbFGFの発現を抑制し, その結果, 血管新生や線維芽細胞の増殖が抑制され, それが治癒を遅延させる一因であると考えられた.
- 大阪歯科学会の論文
- 1997-12-25
著者
関連論文
- 顎関節の痛みに対する消炎鎮痛薬の効果判定基準作成委員会 : 顎関節の痛みに対する消炎鎮痛薬の効果判定基準
- 外側翼突筋下頭の筋電図を用いて関節鏡支援下での顎関節開放剥離授動術の術後評価を行った顎関節症の1例
- コラーゲン誘導関節炎ラットの下顎頭軟骨における細胞外マトリックスの変化とMMP-3の発現
- 濾胞型エナメル上皮腫由来細胞に対するレチノイン酸およびビタミンD_3の影響
- 大阪歯科大学口腔外科学第2講座における11年間の顎矯正手術の臨床統計的観察
- 4NQO誘発ラット舌癌発生過程における細胞増殖能と血管増生との関連
- 頬粘膜部に発生した胞巣状軟部肉腫の1例
- 舌骨骨折, 披裂軟骨脱臼を併発した下顎骨骨折の1例
- 口蓋に発生した mucinous adenocarcinoma の1例
- グルココルチコイド投与ラット舌の創傷治癒過程におけるbasic fibroblast growth factorの発現と局在に関する研究
- 線維性癒着を伴った非復位性関節円板前外方転位例に対し外科的療法を施行後円板復位した顎関節症の1例
- 電撃様関節痛と開口障害が長期に持続した顎関節症の1例
- 早期口腔癌における VEL scope システムの有用性について
- 電撃様関節痛と開口障害が長期に持続した顎関節症の1例