児童を対象にした口腔診査情報による永久歯う蝕ハイリスク児の検出について
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概要
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児童期において, 歯科保健管理を効率よく進めていくためには, う蝕発生状況を予測し, 重点対象をあらかじめ選定できることが重要な課題となる. そこで, 口腔診査情報のうちdmft数, 永久歯萌出歯 (以下, NPと略す) 数およびDMFT数を指標として, 永久歯う蝕ハイリスク児の検出をスクリーニング手法を用いて試み, その有用性を検討した. 対象者は, 大阪府下の某小学校へ1980年から1982年に入学し卒業まで在籍した382名とし, 毎年5月に口腔診査を実施した. 永久歯う蝕ハイリスク児の基準設定は, 6年生のDMFT indexを基に, DMFT4歯以上から9歯以上までの6段階とした. 一方, スクリーニングレベルの設定は, 1年生時のdmft数, NP数およびDMFT数の分布を基に, dmft数では7歯以上から13歯以上までの7段階, NP数では5歯以上から10歯以上までの6段階およびDMFT数では1歯以上と2歯以上の2段階とした. そこで, 各指標単独および組み合わせた場合の各スクリーニングレベルにおける敏感度および特異度からの有効性と, 陽性適中率および陰性適中率からの予測性により永久歯う蝕ハイリスク児の検出精度を判定した. 以上の調査および分析により, 次の結果を得た. 1. 各指標を単独でスクリーニングした場合, 永久歯う蝕ハイリスク児の基準をDMFT 5歯以上として, スクリーニング陽性レベルを1年生時のdmft 10歯以上およびDMFT 1歯以上とすると, 有効性および予測性とも良好となった. NP数では有効性が認められたが, 予測性が低くなった. 2. 2つの指標を組み合わせてスクリーニングした場合, いずれの組み合わせにおいても特異度および陰性適中率は高くなったが, 敏感度が著しく低くなった. したがって, この場合ハイリスク児の検出よりむしろ真陰性者すなわち6年生で永久歯う蝕の少ない児童の検出には効果的であった. さらに, 陽性レベルを変えずに陰性者に特定条件を与えて固定した場合, 対象者は減少するものの, ハイリスク児の基準をDMFT 5歯以上とすると, 各スクリーニングレベルで有効性および予測性とも良好となった. 3. 陽性レベルを1年生のDMFT 1歯以上, NP 6歯以上およびdmft 10歯以上として, 3つの指標を組み合わせてスクリーニングした場合, ハイリスク児の基準をDMFT 5歯以上で予測性は高くなるものの敏感度が低くなり有効でなかった. さらに, 陽性レベルを変えずに陰性レベルを1年生のDMFT 0歯, NP 6歯以下およびdmft 7歯以下とし, ハイリスク児の基準をDMFT 5歯以上とすると, 対象者は減少するものの, 有効性および予測性がともに良好となった. 以上のことから, 永久歯う蝕ハイリスク児の基準を6年生時DMFT 5歯以上, すなわち平均値よりわずかに高い値に設定すると, 1年生時の口腔診査情報を用いてう蝕ハイリスク児を精度よく検出できることが明らかとなった. したがって, 学校歯科保健活動において, 個々の児童を対象に適用していくことにより, きめ細かな保健管理が可能であることが示唆された.
- 大阪歯科学会の論文
- 1992-04-25
著者
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