Porphyromonas gingivalis外膜タンパクの分離精製と白血球に対する遊走活性
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概要
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歯周疾患をはじめとする口腔感染症の発症と増悪化のメカニズムを解析するために, 口腔常在菌の直接的病原因子やこれらに対する免疫反応が調べられている. Porphyromonas gingivalis (以下P. g. と略す) では, 可溶性タンパク, 線毛, LPSおよび外膜などに対する抗体価の上昇が認められている. さらに, 外膜から形成される菌体外小胞は, 歯肉上皮細胞中に侵入することも報告され, これらP. g. の構造物と歯周疾患発症との関連が注目されている. しかし, 小胞を形成しているP. g. の外膜タンパクは, 超音波破砕法で抽出精製され, SDS-PAGEにより分子量が明らかにされているが, 外膜タンパクの免疫細胞に及ぼす影響はほとんど調べられていない. 本研究は, P. g. の外膜タンパクの抽出精製法を検討するとともに, 抽出した外膜タンパクのmonocyte遊走能, マクロファージとリンパ球刺激能について検討し, 歯周組織における免疫成立と歯槽骨吸収について考察を加えた. 材料および方法 外膜は, 菌体から2% cetyltrimethylammonium bromideで抽出後, DEAE-Sepharose CL 6Bカラムで精製した. 精製した外膜タンパクの分子量はSDS-PAGEで測定した. 外膜タンパクに対する抗体がヒト血清中に生成されているか否かは, 歯周疾患患者8名の血清をウエスタンブロッティング法で調べた. マクロファージとリンパ球は, 雄モルモットに流動パラフィンを注入後腹腔内に浸出してきた炎症性細胞から分離して用いた. マクロファージの刺激はマクロファージを付着させたwellに, また, リンパ球の刺激はリンパ球浮遊液を分注したwellに外膜タンパクを添加し, その上清を用いて調べた. Monocyteの遊走試験は48-well chemotaxis chamberを用いたメンブランフィルター法で行った. 抗血清による遊走阻止は, 被験液に抗外膜タンパク血清を添加して検討した. 結果と考察 1. 10lの培養菌液から粗外膜画分は, 約2.5mgが得られ, SDS-PAGEでは40kDaと53kDa付近に2本の太いバンドが認められた. 2. 粗外膜タンパクをDEAE-Sepharose CL 6Bカラムにより分画したところ素通り画分から40kDaタンパク, 吸着画分の第1ピークから53kDaタンパクのバンドが検出された. 3. 40kDaおよび53kDaタンパクは, すべての歯周疾患患者血清と反応した. 4. Monocyte遊走刺激能は40kDaタンパクの場合, 5μg/mlで最大値75±2をまた53kDaタンパクの場合, 2.5μg/mlで同81±4を示した. この刺激能は抗血清によって阻止された. 5. 53kDaタンパクを25μg/ml, 40kDaタンパクを10μg/ml添加した場合, マクロファージが産生するmonocyte遊走刺激能は, それぞれ最大値65±3と, 32±2を示した. 抗血清を添加したときこの活性は, 53kDaでは消失しなかったが, 40kDaでは消失した. 6. 外膜タンパクによるリンパ球刺激能は40kDaでは最大値81±4を, また53kDaでは同69±3を示した. これらの活性は抗血清によってともに阻止されなかった. 以上述べたように, P. g. の外膜タンパクは, 抗原としてマクロファージによって処理, 提示され, 宿主血清中に抗外膜タンパク抗体を産生するとともに, 感染局所へのmonocyteの遊走を活性化したり, リンパ球やマクロファージにmonocyte遊走因子を産生させることによって, 歯周組織での細胞性免疫の成立に関与している. さらに最近, 破骨細胞がmacrophage/monocyte系の細胞から分化するとの報告もあり, P. g. の外膜タンパクがマクロファージを介しての骨吸収にも関連しているのかもしれない.
- 1992-04-25
著者
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