Prevotella nigrescens由来赤血球凝集因子の性状について
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概要
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Prevotella intermediaは, Shahによって分類学的に P. intermedia と Prevotella nigrescensに分けられている. 両菌種は lipase産生性によって鑑別されると記載されているが, 松井らによって報告されているように, 両菌種ともlipaseを産生する株が多くみられる. したがって, 表現形質によって両者の鑑別は困難であり, 菌体タンパク泳動パターンやDNA-DNA hybridizationによらざるを得ない. P. intermedia や P. nigrescensは常在菌叢ばかりでなく, 感染根管由来の感染症, 急性壊死性潰瘍性歯肉炎および成人性歯周炎の病巣から高頻度に分離される. これらの菌種は病原的な役割を果たす種々の加水分解酵素を産生する. とくに重篤な歯性感染症から分離される P. intermedia や P. nigrescensでは, 常在菌叢や慢性根劣性歯周炎から分離される P. intermedia や P. nigrescensと異なり, hyaluronidase, chondroitin sulfatase, collagenase, lecithinaseなどの病原因子を多く保有している. また, P. intermedia や P. nigrescensの菌体表層には形態の異なる綿毛様構造が存在し, 上皮細胞への付着性や赤血球凝集性に関連している. P. intermediaの赤血球凝集因子に関しては, 線毛性および非線毛性凝集因子が分離精製され, その性状が明らかにされている. 最近, 著者らは, P.intermedia strain E18由来の非線毛性赤血球凝集因子(E18HA)と, 赤血球凝集活性をもつ P. intermediaや P. nigrescensとの間に共通抗原性がみられることを明らかにしている. しかし, 強い赤血球凝集活性を示す P. intermedia ATCC 15032 や P. nigrescens strain E4の菌体浮遊液とE18HAに対する抗血清との間に沈降線は認められなかった. そこで, 本研究では, P. intermedia や P. nigrescensの赤血球凝集因子の heterogeneityを検討する目的で, P. nigrescens strain E4から赤血球凝集因子(E4H4)を分離精製し, 抗原性や性状についてE18HAと比較した. その結果, 菌体を剪断後, 超音波処理し, 35,000rpm, 2時間遠心した上清に赤血球凝集活性がみられた. 活性画分を Sepharose CL-4Bカラムに供した結果, 第1ピークに続く画分に中程度の, また, 第2ピークに高い活性がみられた. それらの活性画分をE18HAに対するIgGとゲル内沈降反応させると, 両者とも明瞭な沈降線を形成した. ついで, 赤血球凝集活性はみられるが, E18HAの抗血清と沈降線を形成しなかった P. intermedia ATCC 15032と赤血球凝集活性のみられなかった P. nigrescens strain P43および P77の菌体を剪断後, 超音波処理してE18HAのIgGと反応させた結果, 赤血球凝集性のある P. intermedia ATCC 15032との間に沈降線が形成された. しかし, 凝集活性のない P. nigrescens strain P43とP77に沈降線はみられなかった. E4HAをSDS-PAGEで泳動した結果, 40kDa付近に明瞭な1本のバンドが形成された. E18HAに対するIgGを用いた Western blottingで40kDa付近に発色がみられた. それゆえ, E4HAは約40kDaのサブユニットをもつ赤血球凝集因子と考えられる. E4HAは耐熱性であり, trypsin, chymotrypsinおよび proteaseに感受性を示した. しかし, E4HAは β-glucosidaseで活性が消失する点でE18HAと異なっていた. また, E4HAは_D-galactoseやlactoseで影響を受けず, _L-fucose, _L-rhamnoseおよび maltoseの添加で活性が8倍まで増加している点でE18HAとは異なっていた. 以上の結果から, E4HAとE18HAの性状は異なるが, 本活性因子はタンパク-糖複合体で, 赤血球凝集活性をもつ P.intermedia や P. nigreescensに共通する因子であると考えられる.
- 1996-09-25
著者
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