麻酔と唾液分泌に関する研究 : 吸入麻酔薬および神経伝達物質の影響
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概要
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唾液分泌はおもに, 交感, 副交感神経により支配され, その神経伝達物質としてアセチルコリン, ノルアドレナリンがよく知られている. これらの自律神経系の唾液分泌における役割は複雑で不明な点も多いが, 神経科学の発達に伴ない, 非コリン非アドレナリン性の血管拡張や唾液分泌が明らかにされてきている. 一方, 唾液分泌の機序は, これら自律神経系の支配とともに, 情動を含めた高位中枢の影響も受けており複雑である. 本研究は, ラットにおいて, 高位中枢の影響を全脊椎麻酔 (total spinal block : TSB) 法により遮断し, 吸入麻酔薬である笑気, halothane, enfluraneによる唾液分泌量の変動を観察した. さらに, 神経伝達物質であるadrenalinとvasoactive intestinal polypeptide (VIP) を静脈内投与し, 唾液分泌に対する影響を観察した. また, VIPについては, 免疫組織学的手法を用いて, 顎下腺におけるVIP陽性線維の分布を観察し, 以下の結果を得た. 1) TSB下で, 笑気の唾液分泌への影響は認められなかった. 2) TSB下で, halothaneおよびenfluraneは唾液分泌を抑制した. 3) 平均動脈圧を上昇させない量のadrenalin投与により唾液分泌量, 顎下腺血流量ともに抑制を認めた. 一方, TSB下では, 同量のadrenalin投与により唾液分泌量, 顎下腺血流量ともに変動を認めなかった. 4) VIPはアトロピン抵抗性の唾液分泌作用を示した. 5) 蛍光抗体染色法により, 顎下腺導管および腺房周囲にVIP陽性線維を認めた.
- 大阪歯科学会の論文
- 1990-10-25
著者
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