ロシア語力点学習のためのCALLシステム
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概要
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現在,科研で「高等教育改革に資するマルチメディアの高度利用」が進行中で,報告者もロシア語CALLシステムの作成でこれに参加している。ロシア語教育での難関としては,文字学習,名詞・形容詞等の格変化,動詞の体,力点の位置,構文論等があげられるが,文字,格変化,力点の学習等は,外的・形式的なもののため,コンピュータの利用が効果的な分野と考えられる。特に力点学習については,「比較的初歩のロシア語学習者にとって,第一の関門(格変化)突破はさして困難ではないようだが,第二の関門,即ちアクセントの関門を首尾よく突破できる学生は,ほんの一握りである。……これは教授法の欠陥に負うところが大きく……」(神山孝夫,「ロシア語アクセント研究」)初級の文法書や読本では予め力点表示がなされているが,中級以上になってロシアの出版物を教材に使うと,とたんに力点の問題でつまずくことになる。本研究では,修得に時間と手間のかかる力点学習を支援するシステムの構築をめざしている。力点学習では,大原則:「力点は,単語内の任意の音節を勝手に移動するのではなく,語幹と語尾の間を規則的に交代する」を先ず確認させる。ここで力点の位置を示す以下の記号を使う。A:語幹に固定したアクセントB:語尾に固定したアクセントC:語幹アクセントと語尾アクセントが交替(性・数によって位置が異なる)上記の記号を単数と複数で組み合わせ,実際のロシア語での出現と合わせるとAA,BB,AB,BA,AC,BC,CC,CA型が考えられるが,ここで事態を複雑にしているのは,以下の補足ルールがあるためである。ルール1:力点が語尾にあるはずだが,語尾が母音を含まないゼロ語尾の場合には,力点は語幹の最終音節に移動する(仮力点)。このゼロ語尾は通常,男性名詞では単数主(=対)格,中性と女性名詞では,硬変化の複数生(=対)格に現れる。ルール2:単数主格の力点が語尾で,複数になって力点が語幹に移るもの(BA,BC等)で,語幹が2音節以上のものに対しては,語幹の最終音節になるが,もしそこに出没母音が出現すれば一つ前に移動する。величин-а'/(複)величи'н-ы/величи'н-♯(BA型,複・生はゼロ語尾)ルール3:上記の場合でC型(女性単数対格で語幹,複数主格で語幹)は,語幹の力点は第一音節となる。例голов-а'/(単・対)го'лов-у/(複)го'лов-ы(CC型)現在力点学習CALLシステムとして作成しているのは,次の二つである。(1)上記の力点理論を,視覚的に分かりやすく説明するマルチメディア教材の作成。(2)任意のロシア語テキストに,自動的に力点を付加するプログラムの作成。その際,力点の位置に選択肢のあるものはそれらを指摘し,選択のためのヒントを与える。なお印刷テキストを電子データに換えるためにOCR(光学的文字認識)ソフトも利用。詳しくは平成13年度の、上記科研報告書,pp.225〜230を参照されたい。
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