手術とインフォームド・コンセント法理 : 外科医の立場から(第8回日本生命倫理学会年次大会シンポジウム「インフォームド・コンセントの功罪」)
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概要
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近年、医師-患者関係において、インフォームド・コンセントがキーワードとして叫ばれ、徐々にその浸透が見られることは、歓迎すべき事であろう。しかしICを倫理規範のみならず法的規範とする、すなわちICを米国のように法理として医療現場に強制することには私は疑問をもつ。本邦でも、説明義務違反を問う医療訴訟が増え、IC法理に添うような判決がみられる。私の専門の脳外科領域でも、脳血管障害の手術に関する裁判例が、平成に入り7件が法律誌上にみられる。このうち5例で説明義務違反が争点になり、3例において義務違反が肯定されているが、その判決趣旨は、必ずしも統一されておらず、我々外科医を困惑させるものもある。医師には患者の自己決定権の尊重のみならず、その安寧を保つという義務もある。ICを法的義務として強調しすぎると、医師は患者に自己決定を強い、患者によっては医師-患者関係が損なわれる可能性があろう。ICを法的義務とする場合には慎重な配慮が望まれる。
- 日本生命倫理学会の論文
- 1997-09-08
著者
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