バイオエシックスの方法論論争と現代日本社会 : 共同体優先主義を手がかりとして
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概要
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我が国におけるバイオエシックスの展開において、「共同体主義」がどのように語られているのかを整理し、その議論の限界と可能性を示すことが本稿の目的である。社会理論の領域において、1970年代には原理尊重主義的な考え方が大きな影響力を持っていた。例えば、個人の「自律性」という概念をあたかも人類普遍の原理であるかのように位置付け、種々の道徳判断をそれに基づいて正当化するという論法が多用されたことにもそれが表われている。こういった傾向に対し、その後疑問が呈されるようになる。その例として1980年代に北米において影響力を持った共同体優先主義(communitrianism)的社会理論を挙げることができよう。近年我が国においても「原理尊重主義的」バイオエシックスに対する批判がなされるようになった。しかし、その論調は社会理論での「リベラリズム」対「共同体優先主義」という枠組みを皮相的に利用しているだけで、建設的な議論の展開へは繋がっていない。むしろ「欧米文化」対「日本文化」といったナショナリスティックな枠組みへと議論が矮小化されてしまっているように思われる。本稿では、「共同体優先主義的バイオエシックス」による「原理尊重主義」批判をこういった枠組みから解放し、我が国におけるバイオエシックスの議論をより建設的に深化させるためのきっかけを提示したい。
- 1999-09-13
著者
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