流体近似によるバッファ型待ち行列解析のためのパソコン用ソフト
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
窓口が暇になることがあまり起こらないまま過程が進行するようなタイプの待ち行列システムの実例は多い。たとえば、鉱石運搬船は満載してきた鉱石を艀を使って順次荷下しするが、すべての鉱石を下し終えれば、その過程は終了する。その間、艀やタグボートの不足のため、荷下しを中断することはあるが、そう頻繁に起こるわけではない。生産工程では、生産を休まずに続行するため、仕掛り在庫をある程度持つようにしているが、それがあまり大きくなると不経済であるから、仕掛り在庫の適正量を知りたいという要望が多い。このような問題に対しては、確率論的なアプーーチを中心とする通常の待ち行列理論によるよりも、いわゆる流体近似により、確定的な問題として扱う方がよいことが知られている。この方法は確率論的方法に比べ原理的にははるかに簡単であるとはいえ、種々のモデルに対して、個々に計算を実行しようとするとそれなりの工夫も必要で、それがネックになって現場で使いこなされているとは言えない状況である。そこで、現実に多いタイプの待ち行列システムを定式化できる包括的なモデルを考え、それに対する計算のアルゴリズムを確立し、更にそれを利用して現実問題をこのモデルで定式化するための使いやすい支援システムをパソコン上で作ることは実用上有意義な仕事であると言えよう。この小論のねらいもそこにあり、支援システムのプロトタイプとなりうるプログラム・パッケージを作成したという報告である。基本となる考え方は、流体近似により、確定的な問題として扱うということの他、客の種類ごとに流れを分割し、それらの関連を考えるために制約条件とindicator variableを利用すること、そして、パソコン上で作る支援システムは会話的であること、などである。ここで作成したプログラム・パッケージをFFQAと呼ぶ。FFQAにはFFQA-GAPとFFQA-RAPIDの2つがある。FFQA-GAPでは、制約条件の記述はユーザがBASICを用いて行い、計算はいわゆる時間駆動方式による。一方、FFQA-RAPIDは適用対象は若干限られたものの制約条件の記述も会話的で、シミュレーション言語やパソコンに馴染みの薄いユーザにも使いやすくなっている上、事象駆動方式によるため計算も早い。FFQAと代表的なシミュレーション言語による計算結果および使用経験を10例ほどについて比較検討した結果、流体近似の可能な場合には、平均待ち時間などを評価尺度として採用する限り、取扱いの容易さや計算時間の短さといったFFQAの実用的な優位性は概ね確認できたと思われる。
- 社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会の論文
著者
関連論文
- III.討論 : 誌上シンポジウム(問題解決法としてのOR)
- 液体近似による待ち行列の解析とパソコン用ソフトFFQA(待ち行列理論とその周辺)
- 流体近似によるバッファ型待ち行列解析のためのパソコン用ソフト
- スリランカの銀行における待ち行列の流体近似モデル
- 発展モデルについて(第三世界とマイコン)
- 大学におけるOR教育 : 1つの調査(OR教育)
- オペレーションズ・リサーチ
- OR学会と応用確率論の思い出(歴代会長からのメッセージ,学会創立50周年記念号)
- 会長就任のご挨拶
- 在庫管理における最適発注量
- M/M型待ち行列の平均待ち時間
- オン・ライン・ネットワーク・システムの近似解析
- 待ち行列アラカルト : 時間と空間のバッファ(待ち行列の現状)
- 中国のOR
- "第2世代"のOR