PH/M/S/K型待ち行列の過渡現象
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概要
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PH/M/S/K(位相型再生入力/指数分布サービス時間/サーバ数S/系内許容呼数K)型待ち行列における過渡現象を解析する。過渡現象を表すものとして、特に、溢れ呼の生起過程、全話中時間長分布、全話中時間長とこの全話中時間内の溢れ呼数の同時分布、非金話中時間分布、系に受け入れられる呼の到着過程、出力過程及び任意時点間における系内状態の過渡確率等を考察する。本解析の基本となるのは、到着位相状態を考慮した系内呼数nからn+1、あるいはnからn-1への初通過時間分布である。これらの初通過時間分布をある種の分解法により導出する。例えば、nからn+1ヘの初通過の場合、この初通過が起こる前にn-1からnへの初通過が何度起こったかにより場合分けをする。系内呼数nから、初めて系内呼数が変化する迄の到着位相の過渡確率と呼の到着に続く到着位相の変化を表す過渡確率(これらは、ほとんどの位相型分布に対し簡単に求まる)を導入するとnからn+1への初通過時間分布は、これらの過渡確率とn-1からnへの初通過時間分布の重量の形で表現できる。0から1への初通過時間分布は簡単に求まるので、nからn+1への初通過時間分布を漸化式の形で得ることができる。nからn-1ヘの初通過時間分布については、この初通過が起こる前にn+1からnへの初通過が何度起こったかにより場合分けすると、同様な結果を得る。この手法によると、初通過時間分布のラプラス・スティルチェス変換形が、次元が高々到着間隔密度関数の位相総数である行列の和と積のみを含む漸化式の形で表現される。連立方程式を解くとか、逆行列を計算するとかという面倒な数値計算手順は全く含まない。上記の初通過時間分布のラプラス・スティルチェス変換形を基本にして、各過渡現象が以下の形で表現される。(1)溢れ呼の生起 生起が再生過程に従う事、及び生起間隔分布のラプラス・スティルチェス変換を導出した。(2)全話中時間長 分布のラプラス・スティルチェス変換を導出した。(3)全話中時間長とその間の溢れ呼数 同時分布のラプラス・スティルチェス変換・母関数を導出した。(4)非金話中時間長 分布のラプラス・スティルチェス変換を導出した。(5)系に受け入れられる呼の到着セミ・マルコフ過程としてとらえ、生起間隔密度をつくるセミ・マルコフ行列のラプラス変換を導出した。(6)呼の退去セミ・マルコフ過程としてとらえ、退去間隔密度をつくるセミ・マルコフ行列のラプラス変換を導出した。(7)系内状態の時間的変動 系内呼数と到着位相の2値をもつマルコフ過程の任意時点間の過渡確率のラプラス変換形を導出した。上記の結果の応用範囲は広い。例えば、(1)によりGI/M/∞の理論を用いて溢れ呼量の積率が計算可能となる。(2)、(6)はそれぞれ、優先権のある待ち行列、タンデム型待ち行列の解析に欠かせない。(8)と部分マルコフ過程の理論を組み合わせると、集団呼、単独呼混在モデルPH^<[x]>+PH/M/S/K型待ち行列が解析可能である。これら応用については別論文で詳しく述べる。
- 社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会の論文