自閉症高危険児における母子愛着関係異常
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概要
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自閉症高危険児の初期徴候の一つとして母子愛着関係の確立障害があるのではないかという仮説を立てた。我々は保健所での1歳半健診で言語発達障害,母親の呼声を無視したり母親の存在に対して余り関心を払わないなど対人関係の希薄性と,多少の固執傾向を有するため,自閉性障害の疑いがあると認められた子供とその母親のペアー(自閉症高危険児群) 16組とコントロールとして正常発達の子供とその母親のベアー(対照児群) 5組の母親愛着関係の観察を行ったが,方法は,AinsworthのStrange Situation Procedureに準拠したものを用いた。その結果,自閉症高危険児群の子供たちは,これまでAinsworthやMainらが報告したA,B,C,Dのクーループとは異なる行動パターンを示すことが明らかになった。更にその行動パターンは2つのタイプに分類することができた。すなわち,(1)全エピソードを通して,母親やストレンジャー(子供が以前会ったことのない人)に関心を示さないというタイプ。(2)ストレンジャーの入室による行動の変化がなく,母親の退室と同時にパニック状態になったり,泣きながら母親捜しをしたりするが,母親との再会(エピソード5) によって泣き止やむことなく,又,嬉しそうな様子を示さないというタイプの2種類であった。これまで自閉症の子供たちは,ストレンジャーより母親の方により愛着を示すという報告がSigmanら,Walterらによってあるが,我々の観察で認められた(1)のグループは母親を安全基地として利用しない,又,(2)のグループは母親を安全基地として利用しようとしても利用できないと考えられた。つまり,母子愛着関係の確立の障害であるのではないかと考えられ,この愛着関係確立の障害が将来自閉症として診断される子供たちの発達早期における指標となるのではないかと結論した。
著者
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白瀧 貞昭
神戸大学医学部精神神経科学講座
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塚本 妙子
神戸大学医学部小児科
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松川 悦之
神戸大学医学部精神神経科学講座
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平 玲子
神戸大学医学部精神神経科学教室
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柏木 宏介
神戸大学医学部精神神経科学教室
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塚本 妙子
神戸大学医学部精神神経科学講座
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白瀧 貞昭
神戸大学医学部精神神経科学教室
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