加工ごまの保存性について : 「いりごま」「すりごま」の香りおよび含有油の性質
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概要
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市販の「いりごま」「すりごま」について,香りの官能検査および含有油の性質の測定を行ない,さらに手製の「いりごま」「すりごま」を作って保存した際の含有油の経時的変化を調べ,次のような結果を得た。1)「いりごま」や「すりごま」のようにすぐに使えるように加工された市販品では,製造後日がたつにつれて,ごま特有の香ばしさがなくなり,加えて古さを感じさせるような好ましくないにおいが発生した。この香りの悪化は「すりごま」の方がより顕著であった。2)これらのごまに含まれている油は比較的安定であり,AV,CoV,IVには製造後の経日変化は見られなかった。しかし,POVはわずかではあるが,明らかに古いものに高い傾向が認められ,1)の香りの悪化と関連があるものと推察される。3)長野県産の黒ごまで手製の「いりごま」「すりごま」を作り,明所および暗所に250日間保存した結果,「すりごま」中の油のAVが明所保存,暗所保存とも著しく上昇したのみで,他はすべて変化が見られず,市販加工ごまの製造後の経目変化とは異なる結果が得られた。このちがいは,品種や製造・保存などの条件のちがいによるものと考えられる。以上,ごまに含まれている油はかなり安定であるが,市販の「いりごま」「すりごま」という状態では,製造後日がたつにつれてPOVがわずかながら上昇し,香りも悪化する。ごまを用いる調理では,その香ばしさがおいしさの重要な要素であることを考えれば,妙りたて,すりたてを用いるのが最良であろうが,これら便利な市販加工ごまについても,風味をより良く保つために,包装や店頭での保管など,改良の余地があるのではないかと考えられる。また,家庭でこれらをある程度まとめて作ることも考えられるが,その場合にも包装あるいは容器,保存場所,保存期間などに留意すべきであろう。
- 日本調理科学会の論文
- 1980-07-30
著者
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