電力市場の自由化と電力産業の再構築
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概要
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This paper examines the liberalization process of the electricity market and the restructuring of the electric power industry, and analyses the electricity market using a simulation model. The U.K. has 10 years' experience since privatization and reform of the electricity industry. The price of electricity in .the U.K. is decreasing, but the supply costs are declining even more, so there exists a large price-cost margin because of the market power of the duopoly. This suggests that the U.K. needs more competition by introducing a new pool system to curtail the market power. From the policy implications of the U.K. experience, we need an emergent restructuring of the Japanese electricity supply industry in order to reduce the highest electricity prices in the world and to prevent environmental disruptions. We propose three points for drastic improvement and reform: firstly, increase of the load factor more than 60 %; secondly, reduction of the huge investment and debt; thirdly, rate reform from a full-cost principle to a price-cap tariff. We must gradually change the Japanese electricity industry from a central large-scale generating and transmission system to a small-scale on-site decentralized system.電気事業の再構築は規制緩和の潮流の中で、世界中で取り組まれている問題である。ヨーロッパ連合(EU)では、域内におけるエネルギー市場統一の一環として、電力市場の単一化まで構想され、現在、その方向に向かつて進んでいる。電力という商品は貯蔵がきかないこと、需要の価格弾力性が小さいこと、送電系統の安定化のためリアルタイムで需給バランスをとることといった特性を持つ。これらの要因が、ガス、航空、電気通信などの事業の経験以上に、電力産業の再構築を困難にしている。これまで発電における規模の経済性が見られたことなどから、発電、送電、配電一貫型、いわゆる垂直統合型の企業が市場を地域独占する形で支配してきた。その代わり、価格規制、参入規制、投資規制などの厳しい規制が行われた。しかし近年の技術革新と制度革新のもとで、電力市場の改革は、1978年米国の公益事業規制法(PURPA)を嚆矢とし1)、89年英国の電気法2)の改正で大きく進展した。我が国でも94年、電気事業の改正が行われ、ようやく、卸電力発電における競争の導入が認められ、今年、電力小売の部分自由化とともに独占禁止法の適用除外がはずされることとなった。欧米諸国では、新しいシステムの再構築を行うとき、どのような政策を採ればどのような効果が現れるかということを、多角的に分析し、比較検討するという政策実験が必ず行われる。電気通信事業の再構築や、環境税の導入においてもこのような政策実験がいかに遂行されたかを見ることができる。そこでは複雑な無数のキーワードの絡み合ったジグゾーパズルを解くような緻密さと根気強さを要求される。この政策実験には大学の学者も積極的に参加し、活発に政策提言を行っている。3)次節では、世界で初めて大規模な電力自由化を行ってきた英国の事例について考察する。3節では、英国の事例をもとに、政策実験のためのシミュレーションモデルを用いて分析結果を検証する。最後に、まとめと我が国電気事業の再構築への提言について検討する。
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