神経症, 心身症における身体的特性 : 安静時および各種負荷時におけるポリグラフ的検討
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概要
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研究対象者は過呼吸症候群9名, 不安, 恐怖神経症17名(この両群は発作型神経症としてまとめた), 筋骨格系心身症18名, 消化器系心身症5名, 心気症9名, 健康対照者18名の計76名である。これらの対象について安静時, アドレナリン注射負荷時, メコリール注射負荷時, 心理的ストレス負荷時のそれぞれ4つの状況下におけるポリグラフ検査を行った。指標としてはGSR, 指尖容積脈波, 心電図, 心電図タコグラフ, 呼吸, 脈拍, 筋電図, 末梢皮膚温度, 最高血圧, 腹部雑音を測定した。これらにより現象的, 症候学的に分類されている神経症や心身症を, 身体的側面から生理学的に, いかなる特徴が認められるかを検索しつぎの結果を得た。1)安静時のポリグラフ所見では, 疾患群と対照群の間に差を認めなかった。2)アドレナリン, メコリール負荷に対する反応を, 従来の判定法で検討すると2群間の差はみられなかったが, 新たな判定を試み, しかもより多くの指標で検討すると疾患群には, それぞれ特定の反応しやすい指標が存在することが認められた。発作型神経症は, 脈拍, 呼吸, 末梢皮膚温度, GSRなどの多くの指標に最も反応しやすく, ついで健康対照者はGSRに反応がよく認められた。しかし消化器系心身症は, 呼吸数に反応が強くみられるのに比べ, GSRは反応性の乏しい傾向にあり, 筋骨格系心身症は筋電図に強い反応が生じやすいが, 呼吸や末梢皮膚温度その他の指標は, 変動し難い傾向がみられた。そして心気症群ではほとんどの指標において反応性が乏しいという結果を得た。3)負荷に対する反応特異性は1)に述べた反応量だけでなく, 反応の方向性についても認められた。健康対照者や心気症群と, 発作型神経症や消化器系心身症とは, 一定の自律神経薬理作用を持つ薬物に対して, ポリグラフの指標によってはまったく反対方向への反応を生じた。また, 互いに異なった方向への薬理作用を持つメコリールとアドレナリンに対しても, 同一の反応を生じることが認められた。4)不安場面をイメージに描かせる心理ストレス負荷で, 各疾患群とくに発作型神経症と筋骨格系心身症に, 反応特異性がより明らかになることが示された。イメージに対する反応と薬物負荷に対する反応は, 生理学的に異なったものであることに注目して若干の考察を試みた。5)以上の成績をもとに, 症状の器官選択性には各疾患群の自律神経系反応の特異性, 特定の器官のhomeostasis機構の脆弱性が深く関与していることを考察し, 症状発現部位で規定されている心身症の各型に, それぞれ特徴ある生理学的基盤がある可能性を推論した。
- 日本心身医学会の論文
- 1976-10-01
著者
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