ウリミバエとミカンコミバエの日本および近接温帯地生息の可否について : 第3報 総合考察と結論
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1. 日本および東洋温帯地では,春から秋にかけての気温は生育繁殖を許す。しかし12月から3月には,食物があっても前成虫は低温のために死亡し,越冬できない。成虫は食物のない時には越冬できないが,食物が得られれば関東,中部以南の地方では冬季の生存は必ずしも不可能ではない。2. 日本および東洋温帯地では,12月から3月には,Dcに対しては露地栽培の寄主植物は存在しない。Ddについては各種の柑橘類や,その他1, 2の寄主植物がある。また近年はビニール製簡易温室での栽培が全国に普及しているから,これを考慮に入れれば食物は冬季も絶無とはいえない。しかしこれらが直ちに摂食できる状態にあるのでなければ,厳寒期の成虫寿命が10日内外であることから推して,越冬は困難であろう。3. 卵や幼虫が被害果とともに倉庫内に保護され,蛹が土壌深く潜入し,あるいは成虫が温室などの温暖な場所に逃避するようなことがあれば,実際の温度は大気温度よりも高い筈であるから,越冬に成功する個体がないとはいえない。4. 過去熱帯地からの両ミバエの伝播の機会は無かったとはいえないが,実際に侵入した回数は少なく,個体数も僅かであったと想像される。将来も同様であろう。一方実験による低温致死日数,飢餓生存日数は供試虫の最後の1頭の死に至るまでの時間であり,それまでに大多数の個体は死亡している。したがって越冬の可能性は極めて厳重な条件で論じたことになる。このような点からみて,侵入個体数が僅少であることは,土着の可能性を一層稀薄にする。この関係は将来の土着防止の見地からいっても重要で,関係する個体数を可及的に少なくするため,植物検査は依然として厳重に行ない,万全を期すためには輸出前の特別措置も必要であろう。
- 1964-09-25
著者
関連論文
- ウリミバエとミカンコミバエの日本および近接温帯地生息の可否について : 第3報 総合考察と結論
- ウリミバエとミカンコミバエの日本および近接温帯地生息の可否について : 第2報 両ミバエの発育生殖積算温度, 低温致死日数ならびに飢餓生存日数と東洋温帯地に対する関係
- ウリミバエとミカンコミバエの日本および近接温帯地生息の可否について : 第1報 両ミバエの発育生殖の可能温度, 適温ならびに可能低温限界と世界の分布地とくに東洋温帯地に対する関係
- 長良川河口堰と水産 : 調査の概要と問題点(河口処理と沿岸海洋-木曽三川の河口処理を中心とするシンポジウム)
- 農薬による公共用水域の汚染
- 5 光による第1化休眠幼虫と第2化休眠幼虫の相違点について(昭和32年度日本農学会大会分科会)