コスモスアザミウマの資源利用様式と翅多型の生態学的意義
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概要
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雄が翅多型を示すコスモスアザミウマを室内で飼育して,花粉摂食が雄の生存,発育および翅型決定に及ぼす影響を調査するとともに,一定温度条件下における発育期間,産卵前期間,および産卵数を明らかにした.また,野外のコスモス頭花上における雄の短翅型構成比率と,成虫性比,雄成虫数,雌成虫数との関係を調査した.これらの結果から,雄の翅多型の生態学的意義について議論した.キクの葉片を摂食した場合の雄の卵から羽化までの発育期間は,18°Cでは約19日,25°Cでは約13日,29°Cでは約10日であった.一方,雌の卵から羽化までの発育期間は,25°Cにおいて約14日であった.コスモス花粉の摂食の有無は,雄の孵化から羽化までの生存率と発育期間,ならびに翅型決定に明確な影響を及ぼさなかった.25°Cと29°Cのいずれの温度条件下においても,キクの葉片およびコスモス花粉を摂食した雌の産卵前期間は1日未満であり,約10日の生存期間中に平均20∼25個の卵を産んだ.コスモスにおいては,一般に,雌および雌雄成虫数の多い頭花ほど,そして雌成虫比率が高い頭花ほど,雄成虫の短翅型構成比率が低かった.また,大部分の小花が開花した後の頭花においては,開花段階の早い頭花ほど雌および雌雄成虫数が多く,雌成虫比率が高く,雄の短翅型構成比率が低い傾向があった.長翅型雄は雌密度の高い頭花へ移動することで効率的に交尾することが可能であり,短翅型雄は自身が羽化した頭花で羽化直後の処女雌と効率良く交尾することができるであろう.すなわち,雄の翅多型は生息場所の時間空間的特性,およびその利用様式によって雄が二通りの繁殖戦術を採用していることと関係していると推察した.
- 1999-02-25
著者
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