トドマツを加害する5種のハマキガの分布構造
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概要
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1965年から1979年までの調査結果をもとに,コスジオビハマキ,トウヒオオハマキ,モミアトキハマキ,トドマツメムシガ,トドマツアミメハマキの分布様式を*m-m回帰法を用いて解析したところ,密度,発育ステージ,サンプルの大きさなどによって違いがあり,それはそれぞれの生活習性と関連づけることができた。1. コスジオビハマキの卵の分布は50cmの枝単位でも1mの枝単位でも卵塊を分布単位とした集中分布であった。これは産卵に好適な針葉の分布や成虫の産卵習性を反映したものと考えられる。孵化した1齢幼虫は摂食せずにすぐ分散し,枝条部や幹で越冬巣をつくり2齢幼虫で越冬する。越冬後の2∼6齢幼虫は1mの枝(または枝全体)を単位とすると,越冬後も卵塊に由来する集団としてのまとまりを維持しているが,孵化直後と越冬後の新芽に移動する際に密度依存的な分散が起こると思われ,集団自体はランダム分布になる。ところが50cmの枝単位でみると,サンプルが小さいために個体を分布単位とする集中分布を示す。さらに平均密度が16匹を越えると餌やすみ場所の不足に伴う移動が起こって,一定の平均密度をもった集団がランダムに分布している状態となる。終齢幼虫から蛹にかけては寄生性昆虫の働きによって,幼虫期を通じて維持されてきた卵塊に由来する集団としてのまとまりがくずれて個体を分布単位とする集中分布になると考えられる。2. トウヒオオハマキの1齢幼虫は当年伸長した針葉を摂食して2齢幼虫となり,摂食場所付近で越冬する。1齢幼虫が分散して1度定着するとその後に大きな分散・移動は起こらないと思われる。そのため,50cmの枝単位では越冬前も越冬後も一貫してランダム分布を示した。しかし越冬後の幼虫および蛹は,1mの枝を単位とすると集中分布を示した。これは1齢幼虫の分散を経てもなお卵の存在していた枝に幼虫が多く残っている傾向があるためと考えられる。またコスジオビハマキの個体数が多くなると,その食害によってトウヒオオハマキの分布様式が影響を受けることが示唆された。3. 卵越冬のモミアトキハマキ,トドマツメムシガ,トドマツアミメハマキの枝単位の分布はいずれも集中分布であった。分布の基本単位は,トドマツメムシガでは個体,残り2種は集団を示唆した。これらの種は芽の付近に産卵し,孵化してから分散する過程がないので,50cmの枝単位でも卵の分布様式が中齢幼虫に反映していると思われる。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1981-02-25
著者
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