マルカイガラムシ類の二次寄生蜂マダラツヤコバチに関する研究 : I.寄生の種類と寄生様式
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概要
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宮崎県と福岡県のマキアカマルカイガラムシおよびトビイロマルカイガラムシを材料として,マダラツヤコバチの寄主の種類とその寄主への寄生様式を調査した。1) マキアカマルカイガラムシを寄主とする一次寄生蜂は次の5種が認められた。すなわち,フタスジコバチ,ハネケナガツヤコバチ,Prospaltella spp. (2種),Aphytis sp. Aである。一方,トビイロマルカイガラムシからはフタスジコバチ,Aphytis sp. Bの2種の一次寄生蜂が認められた。2) マダラツヤコバチはこれらすべての一次寄生蜂の蛹に外部寄生する単寄生性の二次寄生蜂で,FLANDERS (1963)が定義している“直接的二次寄生(direct secondary parasitism)”に属する二次寄生者である。3) 産卵対象とする寄主のステージは世代によって異なっている。すなわち,春から秋にかけての世代では卵は寄主(一次寄生蜂)の蛹の上またはその付近に直接産下される。他方,越冬世代の卵はフタスジコバチの若令幼虫を含んでいるカイガラムシの体内に産下される。このような世代による寄生様式の違いは,越冬のための適応として発達してきたものであろう。4) マダラツヤコバチは過寄生による共喰いと自種寄生という二つのタイプの種内競争を行なうことが認められた。このうち自種寄生は寄主密度低下時において自種個体群の増殖の抑制とその維持に関与する密度制御機構の一つとして役立っているものと考えられる。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1972-12-25
著者
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