適正なガイドにより顎に加わる力を制御する(<特集>顎機能異常(顎関節症)と関連医学の接点を求めて)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
夜間パラファンクションに起因すると思われる,顎関節症2症例を報告する.2症例ともに咬合治療によって顎関節症症状を改善することができた.【症例1】患者さんは起床時の右側顎関節習慣性閉口障害を有する18歳男性である.当科初診より約1年前より,起床時に右側顎関節閉口障害が生じたが,自力で整復が可能であったので放置した.しかし,起床時閉口障害の発生頻度が多くなり,毎朝右側顎関節閉口障害が生じるようになり,当科を来院した.患者さんは側方滑走運動時に第2大臼歯のみが歯牙接触していた.スタビリゼーションスプリントおよび前歯部メタルスプリントにより,アンテリアガイダンスを修正することで症状は消失した.【症例2】患者さんは左側顎関節部に痛みを訴える51歳女性である.左側顎関節部の違和感のため,熟睡することができなかった.患者さんは左側第二小臼歯が鋏状咬合となっていた.同部の咬合接触点を修正することで,顎関節症症状は改善し,夜間も十分な睡眠をとることが可能となった.この2症例の顎運動を6自由度顎運動測定装置(東京歯材社製TRIMET)により測定した結果,側方滑走時の不適切な臼歯部咬合接触がある咬合状態では,パラファンクション時の作業欄下顎頭の動きは後下方に変位するのに対し,ガイドを歯列の前方歯に修正することで,作業側下顎頭の動きは上方に変化し,顎関節症症状が改善したことが分かった.今回の症例よりアンテリアガイダンスを適切な状態に修正することで,顎関節にかかる力をコントロールすることが可能であり,顎関節症症例にアンテリアガイダンスの修正が有効な治療法となりうることが示唆された.
- 日本顎口腔機能学会の論文
- 2003-12-25
著者
-
澤田 宏二
新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食機能再建学分野
-
澤田 宏二
新潟大学 大学院医歯学総合研究科摂食機能再建学
-
澤田 宏二
新潟大学大学院医歯学総合研究科顎顔面再建学講座摂食機能再建学分野
-
澤田 宏二
新潟大学大学院医歯学総合研究科
関連論文
- 顎変形症患者における下顎頭骨形態, 関節円板転位がタッピング運動に及ぼす影響
- ガイドの位置が下顎運動に及ぼす影響 : 顎関節脱臼症例の治療からの観察
- 骨格性下顎前突症例における食物摂取時の食品空隙量および頭部運動量測定の試み
- 3. 食物の大きさが開口量と頭部運動量に与える影響 : 骨格性下顎前突症例の場合(第28回学術大会)
- 顎関節症患者の症状・徴候・精神的健康状態
- 食物取り込み時の食物の大きさが開口量と頭部運動量に与える影響
- 歯のガイドと顎運動機能
- 咬合負荷による犬歯の脈動の変化について
- 歯のガイドの修正による習慣性顎関節脱臼の治療例からみた発症機構の一考察
- 歯のガイドの修正による習慣性顎間接脱臼の治療例
- 7 実験的に付与したリンガライズド・オクルージョンの食物動態評価(一般講演抄録,明倫短期大学学会学術大会抄録)
- リンガライズド咬合の咀嚼機能について(明倫短期大学学会学術大会)
- 4. 適正なガイドにより顎に加わる力を制御する(第30回学術大会)
- 適正なガイドにより顎に加わる力を制御する(顎機能異常(顎関節症)と関連医学の接点を求めて)
- 食物の大きさが開口量と頭部運動量に与える影響 : 骨格性下顎前突症例の場合
- アンテリアル・ガイダンス の存在しない open bite 症例の顎機能状態
- 下顎後方位における噛みしめ時の胸鎖乳突筋の活動
- 咬頭嵌合位の後方偏位と胸鎖乳突筋の活動
- 開咬症例から見るアンテリアガイダンス
- 顆頭安定位を求めるタッピング記録法の試み
- 開咬症例から見るアンテリアガイダンス
- 開咬症例の顎機能状態からみたアンテリアガイダンスの意義
- 上顎臼歯頬側の咬合面形態の変化が食物動態と食物粉砕能力に与える影響
- 歯のガイドと顎運動機能