讃美の方法 : 『古事記』「枯野」の歌謡物語をめぐって
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概要
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『古事記』仁徳天皇記の末尾に置かれている「枯野」の歌謡物語は、仁徳治世を讃える瑞祥譚とされる。本稿は、「枯野」の歌謡と所伝の表現を辿りつつ、当該物語がどのように仁徳讃美を果たしているか、またそれは『記』が形象しようとする仁徳天皇像とどのように結び付いてくるのか、といった点について考察しょうとするものである。その際まず、「琴」という楽器の表象性を明らかにし、「琴」を讃美することが『古事記』にあって、「天下」(あめのした)の統治者たる天皇の威徳の讃美ともなっていることを導き出した。『記』は「枯野」のうたを、<徳>によって「天下」の水系が平らかに治められている様を、直感的・映像的に形象化するものとして定位したのである。さらに、「天下」の水系が平穏を保ってあるというのほ、仁徳代に至って初めて可能になったこと、そうした偉業がほかならぬ父応神の事蹟を受け継ぐものであることを指摘し、『記』が仁徳を、<徳>による統治を成し遂げ、水運の安全確保を果たした天皇として顕揚し讃美する、その一端を担うのが当該物語であるということを以て、結論とした。
- 山梨英和大学の論文
- 1995-12-10
著者
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