隔絶された風景の逆襲 : 視覚の変容を記録したメディアとしてのブラム・ストーカー初期諸作品
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概要
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本論では、ブラム・ストーカー(1847-1912)の初期の小説作品である『蛇峠』(1890)、『ドラキュラ』(1897)、『海の神秘』(1902)における風景描写と、登場人物たちが利用する交通機関との関係性を扱う。鉄道の登場とその速度、および一九世紀半ばのイギリス本土における鉄道網の確立と旅行の大衆化は、ヴィクトリア時代の人々の視覚に重大な変容をもたらし、風景を見る者から隔絶した次々と移り変わる「パノラマ」として捉える感覚を、人々に遍く実装させるに至った。ストーカーの三作品はどれも旅行者を主人公としており、それらの作品における風景描写は、風景とそれをまなさす者との間の断絶と、その断絶を生み出した列車の速度の影響をはっきりと表象している。テクノロジーの発展と人間の知覚の変容との関係性を記録したメディアとして、ストーカーの小説を読み込んでゆくこと。それが本論で試みられているプラクシスである。
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