財産権的アプローチを利用したインターネット上における個人データの保護
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概要
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論説ブロードバンドサービスの普及に伴い我が国は本格的なインターネット常時接続時代へと突入している。インターネットに長時間接続するユーザーが増加するにつれ、インターネット上にユーザーの個人データが流出する危険性は拡大する。精度の高い個人データが一旦、ネットワーク上に流出すれば、データ主体は、たとえ犯人が逮捕された後も私的生活の平穏を脅かされるリスクを常に背負う。個人データの流出予防策に加え、実際にデータが流出した際の被害拡散防止策の充実が今後のインターネット上の個人データ保護政策にとって不可欠である。現在のプライバシー侵害の主な救済手法である不法行為構成には、要件上の限界が存在し、権利保護に費用と時間がかかるばかりでなく、(1)賠償額も低額しか認容されない、(2)立証責任、時効面で柔軟性に欠ける、(3)権利保護の程度が貧富の差に左右される等の問題がある。近時では、情報主体と事業者間において契約関係が存在する場合、事業者がデータ主体の同意した範囲を超えた情報取扱をした場合に債務不履行責任を認める契約アプローチが提唱され、米国では、既にインターネット上での個人データ保護政策のフレームワークとして利用されている。しかし、我が国では事業者のプライバシーポリシーの監視制度やプライバシー保護団体のサポートが機能しておらず、契約アプローチの実効性は期待できない。本稿では、近時のプライバシー保護技術の動向に鑑み、インターネット上への個人データ流出した際の被害拡散防止手法として、財産権的アプローチの有効性を検討し、インターネット上での個人データの交換にライセンス制の導入を提案する。
著者
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