植物遺体の分解と微小真菌群II : 御岳山塊・継子岳にある亜高山帯常緑針葉樹林におけるトウヒの葉の重量減少と微小真菌群集の動態
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概要
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岐阜・長野両県県境にある御岳山塊の一峰である継子岳の北西斜面,標高1,880mに生育している亜高山帯常緑針葉樹林(岐阜県大野郡朝日村,名古屋営林局久々野営林署秋神担当区胡桃島国有林242林班)において,種々の植物遺体の分解と微小真菌群集とに関して,1970年以来研究を実施している。本報告は,それらの研究のうち,トウヒ(Picea jezoensis var. hondoensis)の葉の分解に関する1970年6月から82年11月までの研究の結果である。1)トウヒの葉をグラスファイバーを利用したリター・バッグ法を用いて,林内で分解にまかせた。メッシュの布だけの方法にくらべて過湿であった。2)葉の残存率には測定時ごとにかなりのバラツキがあったが,経過月数に対する残存率の減少過程は,つぎの回帰曲線式に近似した。y=1021.3-2.048x+1.72921×10^<-2>x^2-5.41241×10^<-5>x^3 y:リター・バッグ中の葉の残存率 x:バッグを林内に設置してから回収・測定時までに経過した月数3)回帰曲線式によって,トウヒの葉が,リター・バッグから消失するのに要する年月を推定すると155から160ヵ月,ほゞ13年間となる。4)葉の重量が50%に減少するのに35ヵ月以上を要した。これを他の生態果ての研究結果と比較したところ,1年から2年ほど遅いことが明らかになった。このことについて,試験林の気温が低いことに加えて,トウヒの葉の分解に対する抵抗性が大きいことによるものと推論した。5)試験林における落葉落枝などの植物遺体の年平均分解率と95%分解までに要する年月を試算したところ,それぞれ7.8%と38年6ヵ月とが得られた。6)微小真菌群集の総菌数の変動は,設置後2ヵ月と5ヵ月経過時の20,600〜721,700/g(O.D.W )から36ヵ月後の573,300〜7.800.000/g(O.D.W.)まで増加し,それ以後徐々に減少する経過を示した。7)真菌群集の種類数にも変動がみられた。2ヵ月から5ヵ月経過時の種数は平均値で11種と14種とであった。以後種数は増加し,29ヵ月から65ヵ月経過時には32種から42種が分離された。8)葉の分解程度の違いに応じて,分離される菌群集の種類組成が変動した。Mucor sp.,Trichoderna viride, Penicillium sp. I, P. sp. SG, P. sp.などは常時分離される菌種であり,Mortierella sp., Monotospora sp., Tilachlidium sp. Bl, Bisporomyces sp. II, Gliomastix sp. I, Spicaria sp. Wなどは重量減少率が60%前後になる分解中期になってから出現回数・菌数ともに増加する菌種であった。
- 岐阜大学の論文
- 1983-12-15
著者
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