不確実性の下での環境政策の選択 : 環境税か排出削減量基準か
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
社会における汚染物質排出を抑制するための費用である制御費用関数と、その排出による社会的損害関数に不確実性が存在しないとき、最適な汚染税率と汚染排出削減基準はともに同じ最適な環境成果をもたらす。しかし現実には、企業レベルであれ汚染規制当局レベルであれ、その意思決定において何らかの不確実性が侵入してくる。例えば企業レベルでは、汚染削減の制御技術や、将来の潜在的な規模の経済、学習効果、そして技術伝播度の不確実性、さらに将来の投入財価格の不確実性が存在するであろう。また規制当局が汚染税率や汚染基準を頻繁に変更することも企業の意思決定に不確実性を生むこととなる。他方、汚染規制当局レベルでは、たとえ企業の限界費用関数が既知であっても、規制当局に限界制御費用関数が知られていない場合や、汚染のもたらす社会的損害を測定することの困難さゆえに、規制当局が社会的限界損害関数について不十分な情報しか待っていない場合がある。そこで本稿では、Fishelson (1976)やBaumol=Oates(1988)を参考にしつつ、Adar=Griffin (1976)の議論を見ることとする。得られた経済学的帰結は次の通りである。まず、限界制御費用曲線は確実で既知であるが、規制当局が社会的限界損害曲線つまり限界便益曲線の真の位置を知らないとき、税政策も基準政策もともに社会的厚生損失を生じるが、同じ結果をもたらすため政策選択の問題は生じない。次に、限界便益曲線は確実で既知であるが、限界費用曲線に確率的撹乱が生じるという意味で不確実性が存在するとき、税政策と基準政策の間に期待厚生利得の差が生じ、その程度は、それぞれの曲線の傾きに依存する。かくして当局は期待厚生利得のより大きい政策を選択するべきである。
- 関西大学の論文
- 2003-09-25
著者
関連論文
- 最適消費税の新「逆弾力性命題」
- 線形の最適労働所得税
- 企業への環境補助金の効果
- 不確実性の下での環境政策の選択 : 環境税か排出削減量基準か
- 独占企業と寡占企業に対する最適環境税
- 米国での環境政策、特に排出許可証制度
- 環境税の最適税率と厚生効果の一般均衡分析
- 消費財への環境税の最適税率と厚生効果
- 消費税と労働所得税のMWCとMCF
- 死亡確率・年金と最低消費算定
- 労働所得税のMCF一般型
- 〈研究ノート〉公共財に対する支払意志額と受入補償額の差
- マクロ経済の新しい均衡体系"CC-BS"
- 複占企業とケインジアン乗数 : DixonおよびMankiwの理論改築
- 村田 治 著『公債と財政赤字のマクロ理論』(有斐閣 1996年,4+9+242頁)
- 累積債務国の貯蓄・投資の異時点最適化--Blanchardモデルの離散形
- オプションと環境政策