日本企業の雇用創出と雇用喪失 : 社齢・海外直接投資・研究開発との関連を中心に (岩田暁一教授退任記念号)
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概要
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1991年,94年,95年の通産省『企業活動基本調査』をパネル化したデータを用いて,企業の社齢や海外進出,研究開発の違いが雇用に与えている影響を分析した結果,暫定的ながら次のような結論を得た。(1)社齢の若い企業のほうが雇用創出率は高い反面,雇用喪失率も高く,企業によって雇用の変動に一層大きな違いが見られる。社齢の高い企業には成熟企業が多く,雇用創出率は小さいが雇用喪失率も小さい傾向が見られる。ネットの効果としては,雇用喪失率の差に比べて雇用創出率の差のほうが大きいため,若い企業のほうが雇用は大きく伸びており,開業以来40年以上が経過している企業では純雇用変化率はマイナスになっている。社齢別の企業分布をみると,雇用を伸ばす若い企業の比率が急速に低下しており,一国全体の雇用吸収力が低下するといった,もう一つの少子高齢化問題ともいうべき問題がわが国では進行している。(2)海外直接投資を行なっている企業のほうが,行なっていない企業に比べて国内雇用の減っている企業は多い。ただしこれを雇用創出率と雇用喪失率に分けてみると,雇用喪失率においては両者の差は小さい。むしろ雇用創出率において両者の差は大きく,海外進出企業において雇用を増やす傘業が少ないことによって,こうした差は生まれている。(3)海外子会社の売上,従業者数,対日輸出額は,いずれもこれらが大きく伸びている企業のほうが国内雇用は増加する傾向がみられる。それだけ海外子会社と国内親会社は一定の売上額や従業者数を奪い合い,一方が増えれば一方が減るといった代替関係にあるというよりも,企業(グループ)全体の成長を通じて,ともに拡大したり,ともに減少するいった補完関係にある。ただし製造業に限定した結果では,海外子会社の従業者数の伸びは国内雇用を減らす関係がみられた。(4)研究開発に熱心に取り組んでいる企業では,国内雇用の減少幅は小さい。これを雇用形態別にみると,1人あたり研究開発費の高い企業では従業員に高い技能水準が要求されるため,正規従業員比率が高く,パートタイム労働者や臨時日雇労働者の比率は低い傾向にある。
- 1999-12-25
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