競争優位構築に果たす戦略的提携の役割について
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概要
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事業の成熟化が今日の企業の大きな課題となっており,新たな競争優位を構築し,イノベーションを効果的に創出することが望まれる。しかしながら,業界の境目が曖昧となり,市場と技術のグローバル化が加速度的に進行する中で,企業が単独で革新的な技術や製品を開発することは困難となってきている。従来のように,企業内開発やM&Aといった手法によるだけでは,様々な限界が露呈され,短くなる一方の製品ライフサイクルに俊敏に対応できない状況にある。こうした状況において,当該企業に欠落した能力を効率よく獲得したり,パートナーとの積極的な学習を通じて,競争優位を構築し,新たなものを生み出す手段として戦略的提携が脚光を浴びている。戦略的提携とは,パートナーとの長期的・戦略的な関係を前提とし,学習を伴う企業間関係である。つまり,ライセンス契約やアウトソーシングといった企業間提携にみられる単なる交換取引に留まる関係とは区別して捉えなければならない。本稿は,ポーターに代表される「伝統的戦略論」の検討から出発し,今日の企業に求められる競争優位の源泉とは何かという点を明らかとする。こうした検討を踏まえ,近年の代表的な戦略的提携の研究を検討し,統合化する中から,試論的な戦略的提携のモデルを提示しようとするものである。
- 慶應義塾大学の論文
- 1999-06-25