日本の金融システム不安とコーポレート・ガバナンス構造の弱点
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概要
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本稿では,日本の金融システム不安定化の背景として重要な,銀行部門の脆弱性と,コーポレート・ガバナンスの関係を分析する。そして日本企業と銀行の関係が,地価株価の下落,金利規制の撤廃,資本市場の自由化等の環境変化によりメインバンク・システムがどのように変化して行くか,また日本企業のガバナンス・システムがどのような影響を受けるかについて考察する。第2節で日本の銀行の株式保有に伴うリスクは,いわゆるバブル期以降の不良債権の発生等で弱まった自己資本に比して過大であることを示す。このため今後銀行は,株式保有をその体力に見合った水準に引き下げる可能性が高く,その場合には企業との株式持ち合い関係がかなり弱まることを説明する。第3節で,持ち合い解消に伴い売却される株式が市場でどのように消化されると予想されるか,またそれに伴いどの様な制度変更が必要か,について論じる。まず問題となるのは,極めて不透明な日本の会計制度であり,その早急な見直しが必要である。また従来株式保有のリスクを取ってこなかった家計部門に対し,分散投資等によりリスク管理サービスを提供する株式投資信託業務が今後より重要になるため,税制等の問題を抱えた投資信託制度の見直しも急務である。第4節では,予想される株式の保有構造の変化が,日本のコーポレート・ガバナンスに与える影響について考察する。主要な株主が取引関係のある金融機関や企業から,取引関係のない年金基金や投資信託等の機関投資家や外国の株主に変化して行くに従って,株主の経営陣に対する要求も,従来の「継続的な取引の拡大」から,「株価の上昇や利益の拡大」に重点がシフトして行くと考えられる。またこのような変化は,企業の雇用調整に対する態度や,いわゆる含み益の使い方等に影響を与える可能性が高いことを指摘する。
- 慶應義塾大学の論文
- 1998-08-25
著者
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