わが国企業年金システムの現状と問題点
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概要
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我が国の年金システムは,現在公的年金中心のものになっているが,将来の急速な人口高齢化による年金財政の悪化が見込まれるため,公的年金保険料の大幅な引き上げ,ないし給付の切り下げが予想される。このため,退職者の企業年金への依存度が相対的に高まる可能性が高い。本稿では日本の企業年金システムの仕組みを概観すると伴に,その問題点を指摘する。すなわち,1)企業年金の負債及び資産の時価評価に関する情報開示が十分行われておらず,会計制度やディスクロージャー制度に改善の余地が大きい。2)年金基金に対して過剰な資産運用規制が行われており,そのパフォーマンスを低めている。3)現行の企業年金システムは長期勤続者を過度に優遇しており,結果的に労働者のモビリティを低くしている。産業構造の変化が加速し,労働者の円滑な企業間移動が望まれる今日,企業年金の通算機能を早急に整備することが必要である。4)企業年金や退職金に関する現在の税制は,企業年金制度間の不公平を生むと同時に,一時金による年金受給を有利にしている側面がある。また確定拠出型企業年金の設立を困難にしている。こうした歪みは極力排除していく必要がある。年金基金の規模の拡大とあいまって,年金関連サービス産業の発展が促されよう。さらに,年金基金の株主としての発言権増大に伴い,我が国のコーポレートガバナンスのあり方が変化していく可能性が高い。
- 慶應義塾大学の論文
- 1997-08-25
著者
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