経済管理体制の改革と企業組織形態の選択 : 中国企業グループに関する分析枠組を中心として
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概要
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分業化・専業化の原理に基づいて企業組織構造を改善し,企業ないし産業全体の効率性を上げることは,現在中国の経済が直面する重要な課題の一つである。この目的を達成するには,企業グループを組織化することは一つの有力な手段であると認識されてきた。経済改革以来,中国では企業グループの大規模化,規模の経済を獲得することが重視されてきたものの,理論的研究の視点から,企業グループ構造の変遷と発展を研究し,企業グループのメカニズム自体を分析する研究は多くはない。一方,アメリカ,日本においては,大規模企業,企業グループそのものは成熟段階に発展してきた。それにともなって,理論的研究もかなり蓄積されている。そのなかで,企業の本質を問うアプローチとして,取引コスト理論がよく取り上げられている。ウィリアムソンは取引コストアプローチを用いて市場,企業,H型組織の諸組織形態の比較分析を行った。ウィリアムソンは経済取引を効率的に行うために,状況適応的な組織形態の設計を提案している。今井を代表する中間組織論者は,日本の企業間の取引実態に注目し企業間の取引には内部組織における取引と市場における取引との中間的な性格をもつ点があるということを主張した。また,「準垂直統合型組織」論者は,親企業と下請企業から成る垂直型企業グループに焦点を当ててこのようなグループのなかではそれぞれの企業が統合的かつ自律的という二重性をもつため,その組織的特性を「準垂直統合型」と呼んでいる。本稿では,これら諸アプローチを取り上げ,中国企業グループ化の現実と結びつけ,その客観性とグループの特徴を分析し中国企業グループの分析枠組を提示する。
- 慶應義塾大学の論文
- 1997-06-25