中小企業分野における新技術・新製品開発と企業間関係 (佐藤芳雄教授退任記念号)
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概要
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中小企業の新技術・新製品開発能力,またその事業化能力については,これまで,積極的評価と消極的評価に二分されてきた。積極的に評価する立場からは,中小企業におけるスキル(技能),中小企業を中心とした工業集積の重要性が評価され,逆に消極的評価の立場からは,規模の経済性,開発した基盤技術の応用能力などの点から,大企業の優位性を主張する。本稿では,企業間関係との関連を視野に入れながら,開発型中小企業が開発者利益を獲得・確保する上での問題を論じる。ルーティン化されたスキルやノウハウに技術の核心がある中小企業の場合には,技術の専有可能性は高いとしても,基盤技術の応用・発展が既存技術のごく周辺に限定されやすく,また激しい環境変化のもとで代替技術が登場した場合,対応が困難となる。その場合,開発型中小企業による戦略的企業間関係構築は,企業間学習を通じて開発プロセスでの技術資源活用能力を高める点,また事業化にあたっては,補完資産調達により開発者利益確保を図るという点で意味を持つ。その反面,適切な予防策を講じなければ,技術・ノウハウ,スキルの流出,補完資産供給者の機会主義的行動という問題をもたらしやすい。本稿では,以上の点から,中小企業分野では開発者利益の獲得が制限される可能性が高いことを示す。
- 慶應義塾大学の論文
- 1996-02-25
著者
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