小関税同盟の厚生分析とその誘因非両立性
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概要
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自国の目的関数を最大にするために次善的関税を課すことが望ましい小国が,それぞれ大国と貿易を行い独自に関税を設定している状況から関税同盟の形成に移るケースを考える。関税同盟形成の影響を貿易転換効果,貿易創出効果,そして域内相対価格効果に分割すると,貿易転換効果と域内相対価格効果はそれによって目的関数の値が上昇する国と低下する国とを生じさせ,域内諸国の利害を対立させるが,これに対して貿易創出効果はすべての国の目的関数の値を低下させる。そのため,関税同盟の形成によって以前よりも目的関数の値が低下する国が同盟内に必ず発生し,同盟の形成・維持の誘因は存在しない。この結論は,関税同盟の定義として域内関税・補助金の全廃と引き下げのどちらを考えても,また次善的関税の値がシフトしても常に成り立つので,本論の結論と自由貿易が最適な小国のケースにおける結論とあわせて,小国においては関税同盟形成・維持のインセンティヴがないと総括できる。
- 慶應義塾大学の論文
- 1995-10-25