女性と貧困 : 性・家族・階層をめぐる新たな問題
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概要
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女性の解放、自立という側面を持つ最近の離婚の増加が、一方で大量の貧困母子家族を生み出すというパラドックスが生じている。欧米において顕著な「貧困の女性化」と呼ばれるこの新しい現象は、階層・階級問題としての従来の貧困研究にジェンダーの視点を導入する必要性を提起している。<BR>本稿は、わが国の離婚母子家族の貧困化の要因を、このような現代的視角から考察を行うものである。分析対象は母子寮入寮者68名である。<BR>分析の結果、母子家族の貧困化は、女性に期待されている家事・育児の役割と密接に関連した労働市場における低い地位により構造的に生み出されることが明かにされた。特に男性の扶養者を持たない母子家族では、母親が低賃金・不安定な差別的労働市場から脱出しえない限り貧困は免れない。学歴・資格・サボート資源等の個々人の階層的要因は貧困から脱出する契機にもなりうるが、特にわが国では、離婚に対する偏見や母親労働者に対するマイナスのラベリングが根強く、高学歴であっても再就職が困難な場合も見られた。また、今日の福祉施策は、厳しい資格審査や母子一体論によりジェンダーシステムを補完する側面も有し、女性や単親家族の自立要求とは一致しない点も見られた。従って、母子家族の貧困問題の解決には、経済的対応のみではなく、家族、労働市場、その他諸領域に張り巡らされている今日のジェンダーシステムを見直し、男女の自立と平等、子供の発達権を第一義とし、多様な家族を主体的選択しうる新たな家族・福祉・労働諸政策が要求されている。
著者
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