北海道の戦後家族 : 北海道的特殊性と21世紀への課題(<特集>北海道の戦後50年)
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概要
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本稿の目的は,戦後北海道における家族の変容の特色を分析し,21世紀に向けての家族研究の課題を示すことである。その方法は,家族の動向を示すメルクマールの一つとしての,出生率を中心とする人口学的要因の変動を分析し,全国レベルとの共通性と異質性をもたらす原因やメカニズムについての社会学的内実を,先達の研究から検証することである。明らかになったことは,北海道においては,戦後の出生率の安定期が短期間で終り,全国レベルに比べ,一階梯早く,家族形態のシンプル化,小家族化,脱直系的三世代家族化が進行していることである。これと関連し,家族研究においては,農漁村においても都市においても,「家」や「村」の伝統的ネットワークから自立した裸の家族としての,合理性と同時に脆さも持つ,北海道的近代家族の労働と生活の世代的営みの特色が明らかにされた。それは,「高度成長」期においては,農漁業のスクラップ化と労働力供給源としての厳しい北海道社会の位置において,自らの労働と生活を守る過程でもあった。その結果,21世紀の高齢社会に向けて,孤立化し縮小化した近代家族の枠を超えた新しいネットワークの形成が,全国にも増して問われているところである。
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