長良川河口域に出現する魚卵・仔稚魚
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概要
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The larval and juvenile fish fauna in the Nagara River estuary, central Japan, was surveyed during the period from July 1994 to April 1997, and the effects of the recently-completed estuary dam were considered. A total of 4,771 fish eggs collected represented 11 taxa, being mainly coastal marine species. Larvae and juvenile fishes collected totaled 17,848 representing 27 families and 37 species, including brackish, diadromous migratory and coastal marine forms. The lower Nagara River estuary, below the dam, played an important role as spawning and nursery grounds for some marine fishes, which the dam did not directly effect. The larval fish fauna in the upper Nagara River estuary, above the dam, was less diverse than that in the lower estuary, with some upper estuarine marine and brackish-water species disappearing after the closure of the dam gates. Catadromous Plecoglossus altivelis altivelis larvae, usually dominant in the lower reaches of the Nagara River in November, became trapped in the dam backwater after the dam gates were closed, a large proportion of the larvae overall thus being unable to migrate normally to the lower estuarine area. Before the dam gates were closed, Salangichthys microdon was distributed widely throughout the Nagara River estuary, its spawning ground apparently being located in the upper estuary. Following the closure of the gates, the spawning and nursery grounds were destroyed and the species completely disappeared from the lower reaches of the Nagara River. The dam apparently did not affect catadromous Cottus reinii larvae, although it influenced on the anadromous juveniles when they passed over it.1994年7月から1997年4月までの期間に,長良川下流域の6定点(長良川河口堰上流3定点,下流3定点),木曾川下流域の2定点,および揖斐川下流域の4定点で,各季節に1回,丸稚ネットによる魚卵・仔稚魚の採集を行い,この水域の魚卵・仔稚魚相を明らかにし,さらに長良川河口堰がこの水域に生息する仔稚魚の生活に及ぼした影響を考察した。なお,河口堰は本研究開始前の1994年5月から試験運用が始まったが,1995年2月までの調査時には堰は開放されていた。しかし,1995年4月以降の調査時には堰は閉鎖されていた。本研究で,11分類群4,771粒の魚卵と27科37種17,848個体の仔稚魚を採集した。魚卵ほはとんどがサッパやコノシロ,ギマなどの沿岸性海産魚のものであった。仔稚魚は汽水性魚類であるシラウオ アユやウツセミカジカなどの両側回遊性魚類,およびサッパやコノシロ,カタクチイワシ,ナベカ,マハゼなどの沿岸性海産魚類で構成されていた。河口堰下流域ではサッパやカタクチイワシ,ギンポ,ネズッポ属,マハゼなどが優占種で,この水域はこれらの産卵場や成育場として機能していると考えられた。河口堰運用後も堰下流域の魚卵・仔稚魚相に大きな変化はなく,これらに対する河口堰の影響はほとんどないものと考えられた。河口堰上流域は堰運用以前でも下流域に比較して仔稚魚の種数は少なかった。河口堰運用後はサッパやカタクチイワシ,シラウオが分布しなくなり,多様度も低下して仔稚魚相はさらに貧弱なものになった。アユ降河仔魚は11月に最良川下流域全体に分布し,優占穫となっていた。河口堰運用後は堰上流に形成された湛水域に大量に蓄積するようになり,正常な降河回遊が行えないものと考えられた。シラウオは河口堰運用以前では長良川下流域に広く分布し,周年この水域で生活していたものと考えられた。主な産卵場は河口堰上流にあると考えられ,仔魚も主として堰上流域に分布していた。しかし,河口堰運用後は堰上流域では全く出現せず,河口堰によって長良川におけるシラウオの産卵場および成育場は壊滅したと考えられた。ウツセミカジカ降河仔魚は河口堰下流域でも多数出現し,河口堰の影響は少ないと考えられた。しかし,溯河稚魚は揖斐川では採集されたものの,河口堰上流の長良川では採集されず,長良川河口堰はウツセミカジカ溯河稚魚には障害物となっている可能性が考えられた。
- 三重大学の論文
著者
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山下 剛司
三重大学生物資源学部附属水産実験所
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木村 清志
三重大学大学院生物資源学研究科水産実験所
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木村 清志
三重大学生物資源学部附属水産実験所
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岡田 誠
三重大学生物資源学部附属水産実験所
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山下 剛司[他]
三重大学生物資源学部附属水産実験所
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木村 清志
三重大学生物資源学部付属水産実験所
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