藤岡蔵六論 (下)
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概要
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本号では和辻哲郎の藤岡蔵六の訳書批判にはじまる、いわゆる「藤岡事件」をまず詳説する。和辻がなぜ蔵六の処女出版に強い抗議の言説を叩きつけたのか、その疑問を解くためにいくつかの文献を発掘し、それが蔵六の人づき合いのまずさから来ていることも論証した。次に東北帝国大学法文学部に就職できなくなり、新設の甲南高等学校に行き、教育に専念する蔵六の姿をとらえる。そこに「薄幸の哲学者」を読む人もいるが、甲南高校は蔵六にとって一種のアルカディアとして存在したことも述べた。最後に芥川龍之介言うところの藤岡蔵六の「理想主義」とは、常に向上の意欲をもって歩むところにあったことを述べ、彼が理想実現のため、他のことに気を配らなかった点を指摘した。世には能力がありながら真価を発揮し得ず、埋もれてしまう人がいる。藤岡蔵六はまさにその典型であった。本論は芥川龍之介に導かれての藤岡蔵六論の最終回である。
著者
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